最凶魔法少女アリナ 感想

 異界のプリンセス・アリナは魔力が弱い為、留学と言う名目で地球に追いやられ、侍女の花月と共にそれなりに平和に暮らしていた。しかし王である父が地球で死に、その死の間際に力の源である魔石が街に散らばったと唐突に聞かされる。アリナは元居た国に戻り王になるために魔石を集めようとする。散らばった魔石は触手と化して凶暴化し、また別の魔石を求める存在がいた。しかし彼女には戦闘形態〈ユズリハ〉変身する魔力がなく、戦う術が無かった。そこを付き、使い魔の“あらまき”が潜在能力を引き出すためにアリナに淫らな調教をくだすようになる――


 という感じの内容。だらだらと粗筋をまとめましたが設定自体は至って普通の魔法少女物です。主人公が触手の使い魔なのもエロゲでは時折見られる設定でしょう。設定に見るべきものはなく、魔法少女の変身シーンや魔法施行のエフェクトといった魔法少女物の基本中の基本はいまいちでした。にも関わらず本作は十把一絡げになる凡百の魔法少女物に落ちていません。
 有り体に言ってしまえば傑作でした。


 そうなった要因は幾つかありますが、まず1つ目は触手エロ。少女たちを苛む触手の在り方として完璧に近い出来でした。触手にして主人公である“あらまき”は少女たちを快楽で堕として奴隷にする為にねちねちねちねち責めます。
 その執拗さは少女たちの抗いが強いためかなりのものになっています。少女たちの抗いが特徴的なものとなっていて、快楽に堕ちるのは早く、ほぼ触られる瞬間から結構感じることになります。けれどもどんなに白眼を出して叫び悶えても、どんなに体中から液――鼻水さえも出そうとも、奴隷になって主君や友達を裏切ろうとはしません。“あらまき”が快楽装置として優秀であることがきちんと描かれているからこそ、その抵抗は美しく健気に思え、……折りたくなるのが人情と言うもので。何日も放置したり、いく寸前まで100回近くまで持っていったり、身体に触手を埋め込んで昼夜問わず責めたりと手を変え品を変えるのに手に汗握ることになります。何時折れるのか、または折れずに抵抗し切るのか、と。
 シチュエーションも豊富で、破瓜調教、後ろだけを只管責めたり、電撃を使ったり、出産させたり、授業中やプール・部活中に責めたり、ふたなりにさせてみたりと質が高いものが揃っています。ほぼ毎回白眼を剥き、鼻水を垂らし、尿と色々混じった便を吹き出させる創意には感服しました。全ヒロインで鼻を犯して酷い顔にしつつ鼻垢を食べるのはレベル高く好感度大でした。どれもこれも良いのですが、特に面白かったのはふたなりに関してです。感度が高くなっているのは基本で、ヒロインが我慢出来なくなって自分でしてしまうのもまあ基本でしょう。そのシーンがスク水な上にがに股という大層しまらないのがそそられたのですが、それはさておきましょう。本作のふたなりはなんと伝染性で、ヒロインが溜まらなくなって他のヒロインを襲うと、そのヒロインに生えてくることになります。後述しますが、その輪の広がり方は仲が良い少女たちの間だからこそ諸行無常の感がありました。
 ここで驚きべきなのは、ただ一つある敗北バッドエンド凌辱(触手)以外にヒロインたちが“あらまき”以外にされることもなく、女性以外に見られることもないということです。ヒロインを独占したい派にも対応しているという訳ですね。誰とも知らぬ男にやられるシチュエーションがないのは善し悪しなのですが、触手なので画面が寂しいことも汁が足りないこともなく、前述の通りシチュエーションは豊富なため、物足りなさを感じることは少ないと思います。


 要因2つ目は“あらまき”の策略によって仲が良かった少女たちの仲が悪くなり、相手の不幸を笑うようになるパターンが多い点にあります。要は仲間割れ萌え。例えばひっくり返った格好で散々汚されて卵を産み付けられようとする友人がアリナに助けを求めたのを見下げて曰く、

 「でもそれはダメ。だって私、あんたのこと嫌いだもの」

 他にも耳元で変態とか汚いとか囁いたり、自分がされた淫らな行為をされるのを見て喜んだりします。戦いに負けて這いつくばった少女が尻から色々ひり出してしまうシーンでアリナが嬉々として攻めて貶しまくるのなんか超クールでした。何故絵がないのか!と叫びたくなりましたね。
 あと自分に淫らな行為をされるために友人を貶めようとするのですが、白眉だったのは『キャットファイト』と題されたシーン。前述の伝染したふたなりで突っつき合うという何かもういい加減かなりアレなものでした。


 要因3つ目はストーリーラインと台詞の言い回しの上手さ。テンプレを脱却していないのかもしれませんが徹頭徹尾違和感のない巧みな展開と文章でした。
 物語を動かす主人公の“あらまき”は凌辱するのですが、どのヒロインも憎み切れない妙な愛嬌を感じるように描写されていて、また実際に随所で挟まれるシリアスな独白とヒロインに対する勝手ではあるけれども確かな思いやりが描かれることで、プレイヤとしてもそう思えるようになっていました。上記した“あらまき”以外がやらないし、やらせようとしないというのも大きいかもしれません。
 結末はそれまで散々エロ三昧だったのが、日常感ばりばりに戻る、とぼけた良い味を出しているものばかりでした。そうした間の抜けようも不思議と作品に合っていて、全体的に陰惨になりきれないのが良点となっていました。
 文章に関しては少し引用してみると、

 あらまきは楽しげに、そして不敵に笑う。
 「美園、お前を魔王にしてやろう」
 涙を流す美園の目を見て、あらまきはそう言った。

 「奴隷でも、何でもいいんです。利用されているとしても、それでも、いいんです」
 「な、なにをいうのだ……。おまえは何を言うにしても、突然すぎ……る……」
 「それで悲しみが生まれなくなるなら、私は、あなたに全てを捧げます」

 などなど。こうした解り易い格好つけは大好きです。個人的には美園周りに特に好みの文章が多かったです。

 
 以上。満足の行く傑作でした。触手エロ好き、或いは仲間割れ萌えの方にお薦めです。
 

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最凶魔法少女アリナ
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Lusterise (2009-09-25)