シュガーコートフリークス 感想

 リトルウィッチが無期限休止してしまうので本作が一応の最終作となってしまいました。シナリオは兎も角として絵と音楽とデザインのセンスや初期のFDDや現在の使い易いシステムによって好きな会社ですので残念です。大変でしょうができるだけ早く再開して欲しいですねー


 ではシュガーコートフリークスの感想を簡単に。ネタバレは反転してあります。

  • 総論

 通してプレイして普通に面白かったです。
 異国に留学してきた少年が4人のお姫様と出会い恋に落ちるという通俗的なファンタジー学園物。共通はそれなりに長いのですが、そこで「Qualtett!」でも見られた大勢で何かの目的に対して共同作業し仲を深めるという王道の展開がされます。祭りの制作物を作るのですが、組み上げが大掛かりで苦労したり、困った時にアイディアを出しあったり、夜更けにランプを灯して語り合ったり、時にはぶつかり合ったりと、いやあ青春、青春という感じ。見ていて楽しかったです。そうした真っ当な青春物を介して、主人公とヒロインの関係、また彼らと周囲との関係が丁寧に描かれていて、素直に入り込みやすかったです。


 ヒロインたちは皆好印象でした。生まれ故郷のお姫様にして、お菓子好きで素直な珠姫。プライドが高く気を張っていて、でも繊細なジル。明るく面倒見がよく耳年増なマリー。無邪気で人懐っこい小犬系なレン。基本的に陽性であり、陽性な関係を結ぶ彼女たちと仲良くなって結ばれてイチャイチャするのは大変心地良かったです。
 サブキャラも魅力的でした。凛々しく同性から絶大な人気を誇り自らも同性を愛でるクロエや、気まぐれで破壊的な性格をしたライカ、珠姫付きのメイドのマキナ、主人公を教える博士であるカレン、名門貴族を鼻にかけながら実は下々のグループと遊びたいエリスetc、上げていくと切りがありません。少ない描写で彼らの関係を切り取るのが巧みで、特にクロエ×エリスにはにまにましました。わざわざ近寄ってきて高慢かますエリスにいちいち突っかかるクロエ――もうお互い素直になっちゃえよ、と。

  • 個別ルート

 ジルルートはお姫様で政略結婚という王道をなぞり、ぼちぼち。


 マリールート。マリーは実は孤児で、子どもを亡くした事実を受け入れられない母親の前で亡くなった子どもの演技をするために引き取られるのですが、その子どもの振りをすることで本当の自分のパーソナリティが揺らいでしまい、だから自分に自信が持てず主人公と付き合えなくて悩むという流れです。「Air」の遠野美凪を筆頭にエロゲでは何故か散見されるパターンなのですが、そういう家族の状況の作り方と持ち込み方に違和感が無く、盛り上がりには感動しました。
 加えてヒロイン視点が効いていて、マリーとジルの会話には震えました。

 「…………結婚式なんて、一回だけなのよ……?」

 この彼女たちの乙女チックさがお約束の退屈を撃ち砕いていました。誰もが優しい世界の幸せさ、と言い換えても良いかもしれません
 あとマリーとのイチャイチャは恋愛ごとを避けていた耳年増の女の子がいざ付き合いだしたら積極的になって、でもなりすぎてふと我に帰って照れるというシチュエーションで、嗜好に合いニマニマしっぱなしでした。
 

 レンルート。子犬系ヒロインで全身で愛情を現してくる姿に萌えました。


 珠姫ルート。ロックが掛かっていて最後のルートになっています。

 「この街に来て、よかったのだろうか…?」

 その答えを幸せなものにするために男の子が頑張っていくと言う話。それには個人の力だけではなく、皆の力が必要で、何が欠けても成り立ちませんでした。集大成のルートである所以でしょう。
 そして幸せな答えがでたからこそ、お姫様が異国で身を捧げる動機付けとなった――という皮肉な、でも納得が行く流れは見事でした。ミクロがマクロに通じ、人と人との関係性が政治へと昇華し、そして結局は人と人との関係で解決される――ファンタジーであり国々を超えている設定がここで重要な役目を果たしました。
 クライマックスでは裏設定がどばどば放出されるのですが、未消化・未整理なままのものが多く、まあそんなものかという程度。「大いなる歴史」と書いて歴史をプログラムと読ませるセンスは嫌いではないですが、いかんせんやっぱり実際の描写がいまいちです。ファンタジーな世界は実は遠未来でした――というのをやりたくなるのは判りますが、正直もう余程上手くやらないと無様になるんじゃないですかね。
 ただ最後の最後で魅力的なヒロインが爆誕しているのは事実です。名前は“ふぇいたん”。出番は短いですが、GJでした。

  • その他

 絵は大槍葦人さんなので文句なし。可憐です。
 エロシーンはどれもイチャエロとして良かったです。
 音楽も良かったですし、声はどのヒロインもぴったりでした。特にレンはベストマッチでした。
 システムは相変わらず使いやすいです。

  • まとめ

 以上。総じて萌えゲの秀作でした。
 ライカルートやクロエルートが見られるFDを作って欲しいですし、会社復活の時が来ることを祈っています。それにしてもタイトル画面から終えた時の“Good Bye……”が意味深で切なかったです。

  • Link

 OHP-リトルウィッチWEBサイト