スキトキメキトキス 感想

 高校3年生の少女・明菜は落下事故後の昏睡から目覚めると記憶喪失になっていた。事故の原因も何もかも忘れていた。しかし目覚めた瞬間に傍にいた下級生の少女・菜穂を見ると激しい不快感に掻き立てられた。菜穂は明菜を慕うのに何故不快に感じるのだろうか、そして事故の原因は何だろうか――


 という内容。フリーゲームのADVです。
 大筋は明菜は記憶を思い出して真相に辿り着くのが先か、菜穂が明菜を記憶のないまま都合の良い先輩に仕立て上げるのが先かという非常に薄ら寒い心理サスペンスでした。明菜は疑いながら表面上は友好的な振る舞いをし、菜穂は真実を隠しながら無邪気に接してきます。疑い疑われ、騙し騙されの関係は殺伐としていて――良い感じで、好みです。操りの主従を握ろうとする闘争とも取れるのですが、登場人物は少ないにもかかわらず入り組んだ関係になっていくのは素直に感銘しました。


 また疑い敵意に近いものを抱いているにも関わらず、明菜が菜穂の振る舞いにきゅんきゅんと反応して好意を抱いてしまいそうになるあたりは百合ちっくでした。計算づくの菜穂さん怖いわーと思いつつも、動揺する明菜にはにまにましました。そのようなキャラクタの憎しみと好意が同居するアンビバレントな感情を描くのは上手いように感じました。
 これまで述べたように少女たちは感情の操作をするのですが、反して或いはだからこそ――の奥底での感情の選べなさを描くのも優れていました。くるくる回るコインの表と裏と比喩されていて、どちらを上にして倒れるか判らないし、何時裏返るかわかりません。選択肢も効果的で、明菜の行動の要所要所にあり、その行動の違いが及ぼす結果の差の大きさには目眩を覚えました。
 

 どちらの意になったかの結果=エンディングは……見てもらうしかありませんが、基本的には肝が冷えました。今まで切磋した人間関係の答えであり、一筋縄ではいきません。メソッドとしてはスタンダードですが、使い方・描き方が巧みなため陳腐さは全くありませんでした。全てが畳まれたEnd 5がやっぱり一番しっくり来ますが、壊れかけのEnd 3も好みでした。あとEnd 4はきつかった、というようにどれもが印象的です。


 絵はシナリオに合っていました。連携がきちんと取れていたのだと思います。


 以上。ダークな百合サスペンスで大変楽しめました。

  • Link

 スキトキメキトキス