家族計画 そしてまた家族計画を 雑感

 以前プレイして名作と受け止めた作品をリプレイしよう企画、その3。
 備忘録なのであまり長々とした文章は書かないつもり。


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【司】「俺たちは家族になる」
【司】「おまえは親元離れて暮らすため、俺はこの家を世話してもらいたいから」
【司】「利害の一致だ」
【司】「利害の一致から、はじまるんだ」

 ただ一人古屋敷に悠々と暮らす司の元に『あかり』という少女が転がり込んでくることから家族計画が再起動しだす――という出だし。
 家族計画の末莉ルートの先を描いたミニシナリオです。3×2の選択肢を選んでいくと徐々に結末が進んでいくという作り。
 ミニといっても限度があるぐらいかなり短いですが、これ以上ないほどエモーショナルの籠められた逸品に仕立て上げられていました。


 あの密度、あの異様なテンションで長かったらプレイしていて身がもたないですし、まあそもそも長くないことそのものが作品の肝となっていました。
 ざっくりと言うと、本作のプレイ時間は、老いたる主人公がこれから自分の人生を切り開いていく子孫に生き方を残す最期のほんのひとときに重なるのです。
 前作で主人公が身につけた生き方――生き難い人達が好き勝手やって、でも助け合う『家族』。
 主人公の血を最も濃く継ぎ、最も生き難そうなあかりに、身につけて欲しい在り方でした。しかし、その全てをほんの短い時間で伝えられる訳もなく。
 繰り返しプレイするごとに、主人公の経験とそれに裏打ちされた想いを、新たな世代が活かせるように伝わったのか、心残りが残りまくる仕様でした。
 説教上等で、こぼれ落ちたものが多くても、生き難い世の中を必死こいて生きられるだけのものを掬えたのか。
 答えは全ての選択肢を選択し終えた時に露わになります。
 
 
 最後の一連のシーン/主人公の最後の旅立ち。
 そこで本当に心震わす光景が結実します。
 哀しく、涙に満ちたその終わりの光景の、なんと幸せななことか。

 本やドラマに感動することもなく、むしろ雑然とした町の喧噪や一瞬の景色が、郷愁にも似た感慨を抱かせるのみだった。
 だが今……体は泣いていた。

【劉】「そしたら……君が泣いてくれたから」
【劉】「誰よりも大きな声で」

 主人公の最後の感情の漏出<喪失と孤独>と、あかりの最初の感情の漏出<喪失と孤独>が重なり、悲哀の意味合いがシンクロし、しかし死へと向かうベクトルと生へと向かうベクトルはすれ違って物語の主役のバトンタッチが起こる。
 それは、これまで届かなかった/今なお届かない主人公のモノローグへの最高の返歌であり。
 そして幸せな予兆を後にしながら、全てが茫洋と溶けていく終わり。
 ――『家族計画』という物語の締めに最高のシナリオでした。


 以上。正直大好きなシナリオの一つです。

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 家族計画 そしてまた家族計画を [7対応版]