働かないふたり 1-15 感想

 成人しても働かない兄妹と彼らに関わる面々の日常を描いたコメディ。
 kindleでセールしていたので大人買いしたのですが、大正解でした。
 優しくいつまでも眺めていたい世界が描かれており、読んでいて大いにほっこりしました。偶に良い話になりすぎて鼻につく時はあるのですが、おおよそにして刺々しさのないお話を楽しむことが出来ましたね。


 器用でコミュニケーション能力抜群だけど働かない守と、人見知りでバカで天真爛漫で働かない春子。
 二人は仲良く、朝寝て夜一緒にゲームしたり夜食を作ったり、毎日どうでもいいことで騒いで笑い、働かない生活をエンジョイしています。
 そこに小言は言うが深くは追い詰めない母がいて、家族大好きでおおらかな父がいて、訪ねてくる馬鹿な友人たちがいて、二人を隣家から監視するOLがいて……と段々と怪しくなりますが、個性的で楽しい面々が関わってきます。


 例えば唐突にオヤジギャグを聞きたいとなった兄妹が父親にギャグを言えと強制しにきて曰く、

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 (11巻 P10)

 ああもう、仲良いなあこの家族。


 そうした兄妹の裏表のない言動と何でも楽しむ余裕からくる緩い日常と、その緩い空気に巻き込まれることに楽しめる人だけがいるので、醒めない愉快な毎日に思う存分に浸ることが出来ます。
 部屋で踊るだけとか、野球観るだけとか、カレーを食べるだけで騒ぎ。
 偶には道端で知り合った老女の家の庭の芝刈とか、秘密基地を作ったりとか、外に出て、また優しい人に出会う。
 心に余裕がない人が働かないふたりを見て、いつしか余裕が生まれ、その優しい空気で生きていこうと兄妹に積極的に関わってくるし、あるいは他人におおらかになって優しい輪が広がっていく。
 やっぱりアホで、切った爪でつつき合ったり、てるてる坊主になったり、忍者ごっこしたり。 
 青春とは心の若々しさである――というのがサムエル・ウルマンの言葉ですが、それを地で行くような内容かもしれません。若干若々し過ぎはしますが。


 作中内で登場人物は変化や成長することはあるのですが、齢を重ねて衰えることはありません。
 閉じて開かないやさしいせかい――そのフレーズだけ取れば地獄めいているのですが、こうしたある種の楽園は存在意義があるんじゃないかな、あると良いなと思います。


 以上。お気に入りのシリーズとなりました。折に触れて適当な巻を何度か読み返すことでしょう。

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