G線上の魔王 感想

 先日ちょろっと書いた短文(削除済み)を推し進めると嫌な結論に着地してしまいました。そのため方向転換し、月並みに感動したことについて書いてみました。
 ただし具体的なネタバレをせずに書こうとしたため、魔王関連については一切触れていません。なので若干オブラートに包み過ぎた感があります。
 では適当にお読みください。プレイ後に読んだ方があんたはそういう風に受け取っちゃったのねと呆れていただくと嬉しかったりします。

  • 感想

 ここの会社では今までライタが異なっても、ある程度の割合で“人が変質する”ことがテーマとなっていましたが、本作ではそのテーマが全面に押し出ていました。
 椿姫の堕落、花音の没落、水羽の成長――というように4人いるヒロインの中で3人が変わってしまいます。変質していくヒロインに対して主人公が取る行動はそれぞれ異なっていて、推進させるか、助けるか、傍観するかします。その差は目的の明確度によって来ています。具体的に言えば、椿姫ルートでは落とせば即利益に、花音ルートでは守っても以降は本人次第不明、水羽ルートでは精神的充足以外に利益がありません。しかし個別ルートには入ると、行動原理が捻じ曲がった彼女たちは色々な意味で自壊し、戻るか、戻れなくなるのですが、主人公はその変化に対する自分の立ち位置がそれまで通り行かないことに気付き、右往左往します。まあぶっちゃけそれだけなので、単体で見るとそこまで大した話ではありません。

 
 しかしその構造の積み重ねがあるからこそ、最後の最後に至って変わらない想いを持つ少女を再登場/新登場し、主人公こそが変質していた――と反転する図式がより鮮明なものとなっていました。
 少女によって悪夢から覚めた少年は変わる前の純粋な自分と変わった後の利己的な自分が共に間違っていなかったと証明するかのように、少女のため身体を張る。――ボーイ・ミーツ・ガール。2人の物語として実に美しい結末でした。
 そうして選び選ばれた末に大人となったからこそ、きちんと裁きが下されるのですが、それはまた別の話。大人としての始まりの日に、少年の日の続きを重ねるエンディングは納得がいくものでした。
 
  
 その他の点に関して。
 何故かしらどんでん返し・ミスリードが下手になっていました。隠蔽の稚拙さによって隠そうとする裏がちらちらと見えてしまい、プレイしていて疲れました。
 

 文句無しに気に入ったのは部活のシーン。覆面といい口調といい、脱力加減が絶妙で、かなり笑えました。


 絵・音楽・システムは標準以上。


 以上。他の媒体から断絶して評価すれば良作じゃないでしょうか。個人的には車輪より好みでした(というより車輪がきr……)。

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 OHP-あかべぇそふとつぅ