私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 19 雑感

 高校3年の夏休みの終盤~2学期の初日までが収録されています。
 本シリーズはこれまで多くの話を重ねて青春物としての実績を積み上げてきました。主人公・黒木智子は自意識過多のボッチから、徐々に徐々に人の輪が広がっていき、誰かと一緒に行動することを念頭に置き一人になることが考えられないようになっていきます。
 その折々で個性の強い同級生たちとエモーショナルなイベントをこなしてきて好きな話を挙げればキリがないのですが、本巻の或る回はこれまでの中でもトップクラスに素晴らしいものでした。

 その回は『喪183 モテないし台風が来る』。

 
  (kindle No.89)

 夏休みが終わりかけのある日、文化祭の打ち合わせ兼勉強会の予定されていたのですが台風が近づいたため中止となる筈でした。しかし連絡網で回す前にゆりだけが智子の家に来たため、2人だけの勉強会が始まる――という流れ。
 この2人だけの時間がですね、心底尊かった。
 映画を観ながら駄弁り、風の強い中コンビニに買い出しに行き、駄弁りながら勉強して、停電の闇の中密やかに話す。
 そんな、ちょっと特別な日の、彼女たちが醸し出す空気がほんと馨しい。
 智子が雪見だいふく食べて、ゆりがピノを開けて、数コマしたら交換している細かな絵面とか、指をさして何度きゃーっと叫びたくなったことか。
 これぞ青春なのだ――と大声で触れ回りたくもあり、壁になって徹頭徹尾影響を与えず見守りたいという要求もあり、いやもう心が千々に乱れました。
 きっと自分にとって何度も何度も思い出す回になることでしょう。

 まあその後に最終的に粘土で手こきをするちょうお下品な回が来るのがわたモテらしいところではありますが。

 以上。おそらくは高校卒業で一区切りつきそうなので、それまでの時間を大切に読んでいきたいです。

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