20世紀SF〈6〉1990年代―遺伝子戦争 感想まとめ

pub9920世紀SF6「軍用機」読了。0。バクスター作。もしもアポロ12号の着陸が失敗していたらーーというオルタナティブヒストリー物。徐々にタガが外れて行く地球を生粋のアメリカ人の視点で書く展開は良いし、最後の風景の寒々しさがキュンときた。link
pub9920世紀SF6「爬虫類のごとく・・・」読了。0。ソウヤー作。とある男の意識がティラノサウルスの意識と同調しているのは、何故かーーという謎から始まる、意識だけを時間旅行させるタイムトラベル物。link
pub99男性側と判事側が書かれるのだけど、判事側が社会事情の説明以上に書ききれておらず収まりが悪い。繰り返し出てくるアフォリズムもしっくりこない。けど、オチの付け方はタイムパラドックスへの挑戦として悪くない。総じて普通かなlink
pub9920世紀SF6「マジンラ世紀末最終決戦」読了。+1。アメリカの田舎興行師が日本製の全長15mの人型ロボットを手にいれたーーというロボット物。インタビュー形式で語られるのだけど、愉快痛快な楽しい内容だった。link
pub99ジャパニメーションにリスペクトを払われており、パトレイバーとかのけぞるような単語が頻出するボンクラSFとしても悪くない。その上でロボットSFの外連味が発揮されているのだから、たまらないlink
pub99平凡な日本人サラリーマンが「礼儀を教えてやりなさい。お前自身の手で」と命令され、しかと承知ーーとロボットに乗り込むものなんてそうは読めないと思う。うん、いい拾い物だったlink
pub9920世紀SF6「進化」読了。-1。極めて広範囲に耐性をもち、肺炎になれば致死率も高いStaphyrococcus aureusがパンデミックを起こし、パニックになったアメリカを描くバイオ物。耐性菌という良い題材をこんなどうでもいいパニック物にしたことは許し難い。link
pub99アメリカ人にしか興味を抱かないまっちょなアメリカらしい作品だし、耐性菌への対応がアホっぽいとか、対応の発想がホメオっぽいとか調べたんだろうか感が強い。まあでも耐性菌SFを書こうとした心意気で-1としとくlink
pub9920世紀SF6「日の下を歩いて」読了。0。月面に不時着した宇宙飛行士が身一つでいかにして困難に立ち向かうかーーという物語。月/異星遭難物は色々あるけど、一番シンプルな部類だろう。でもだからこそ力強さが伝わってくる文章はひきこまれた。link
pub9920世紀SF6「しあわせの理由」読了。+2。イーガン作で再読。読み返すとやっぱ凄かった。主眼の自分の精神のパラメータをいじられるようになるフラットな世界の描写だけではなく、そうなるまでの過程での非人間的な人間の在り方が実にすばらしかった。link
pub99心に残った一文は「自分の運命を悔やむことが、物理的に不可能だったのだ」。これこそがこの短編を表しているなあと膝を打った。初読の際には読み落としていた所があり、また主人公の症状あたりでは知識が増えているために理解が深まったりした。再読してよかった。link
pub99また5年後に読み返すのも良いかもしれないlink
pub9920世紀SF6「真夜中をダウンロード」読了。-1。仮想世界でセックスシンボルの仮想人格が暴走し、世界が崩壊して行くーーという内容。VR物の肥大した後始末みたいであり、ポストサイバーパンクっぽい。生理的嫌悪感に満ちたオチといい、悪くないけど、その程度でもある。link
pub9920世紀SF6「平ら山を越えて」読了。0。ビッスン作。『隆起』のせいで立ち並ぶ途轍もなく険しい山々をトラックの運転手がヒッチハイクを乗せて越えて行くお話。奇妙な二人旅は古き良き田舎のアメリカを思い起こさせる。link
pub9920世紀SF6「ケンタウルスの死」読了。-1。ダン・シモンズ作。田舎に赴任した若年教師を主人公に、ハイペリオンの前哨作を聞いてきかせるパートと、小学生との触れ合いのパートが交互に語られる。そこかしこに後日花開く要素が蕾を連ねているけど、単体で見たら落ち切っていない微妙な出来link
pub99シュライクがコミックらいくな平凡な化け物から、よくあそこまでSF的な怪物の集大成みたいになったなあという、比較の見方をすれば、まあ読めるかなlink
pub9920世紀SF6「キリマンジャロへ」読了。+1。イアン・マクドナルド作。宇宙から落下してくる生物パッケージにより、キリマンジャロは周辺の生態系は狂い、異境となっていたーーという設定。ジャーナリストの目から、硬質な植物もどきに満ちた世界を華やかで匂い立ってくる文章で描写しているlink
pub99だから、ここに異界が。/ネタとしてはナノテク&バイオSFなのだけど、神話に片足を突っ込んだような書きぶりから、無二の短編になっている。さすがイアン・マクドナルドlink
pub9920世紀SF6「遺伝子戦争」読了。+1。ゲノムの書き換えにより変容が進む人類を描くバイオSF。ハイウェイを突っ走るようにどんどんアクティブに変わっていく目まぐるしさがきちんと出ている上で、つまらない少年がつまらないままにありえない地点に到達してしまう諸行無常さが強くなっているlink
pub99殺し屋の忠誠遺伝子を書き換えて妻にしてしまうとか膨らませられるエピソードも読みどころ。バイオSFの陰陽を知るなら最適化もしれないlink
pub99これで20世紀SF6読了。「しあわせぼ理由」がやはりピカイチで、次に「キリマンジャロへ」。その下にマジンラ世紀末最終大決戦」「軍用機」「遺伝子戦争」が並ぶ。粒ぞろいではあるけど、猛烈に語りたくなる心に残るのは無かったかなlink
pub99これで2012年中に河出文庫の20世紀SFアンソロジーを全て読むことが出来た。良かった良かったlink

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