私は君を泣かせたい2 雑感

 素直になれず外面がよいが映画研究部の部室内で一人になったら素を表す少女、相沢羊。不良と噂される強面だけど映画みてすぐに泣く感受性の豊か少女、虎島八十。
 2人が映画研究部で映画を見たりなしながら、不器用な2人が徐々に仲良くなっていく、百合漫画の第2巻。
 

 相変わらずよく泣く虎島さんが可愛い。
(P17)


 それは兎も角。
 羊が素の姿を表せるという空間で、虎島が素の感情を露わにする、2人きりの時間が重ねられるにつれて仲が進展する。
 そして逆に2人だけの時に、2人は巣を表して気心が知れていく――
 という関係性の拡張と雰囲気の生成が絶妙でした。


 また映画を上映して泣くだけではなく、目先を変える展開として、部室で着替えて冗談で迫ったら冗談じゃなくなったり、エロスが多い映画を上映して気まずくなったりするのですが、相手の境界内に踏みこんでしまい、それを自覚していちいち赤面する2人の可愛さときたら。
 

 そして仲が良くなればなるほど、自分だけが知っている相手の素の要素が増えていけば増えていくほど、喪失への恐怖が増していくのでした。
 高校生――まだまだ何もかもを得ていく青い季節。
 しかし、若い感性と、外面の良さを保つというストレスは、いずれそうじゃなくなるかもしれないというありえぬ怖れを過大評価してしまいます。
 またエピソードとしては、親友同士で幼馴染同士の少女たちの絆が一つの告白で呆気なく壊れてしまうのを羊が目の当たりにしてしまいますのでした。


 友情は――脆いと悟った羊の結論。
 得ていたものと、これからも得たいもの。
(P156)
 それを失わないためにはどうするのか。
 そこからの、最後数ページに震えて、キュンキュンしました。
 君の――好きな人の、感情を食べたいという、正しき魔物の誕生が今。


 まあといっても大体はラブコメなのでニヤニヤと素直に楽しめば良いのでしょうが、こうした暗い感情の発露って大好きなので堪らんものがありました。


 以上。大好きです。次の巻も期待。

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 私は君を泣かせたい 2|白泉社