――ほかになにかいえることは?
――だいたいそんなところです。人類に知られているあらゆる装置で数カ月間調べたあと、わたしは自分たちが壁に突きあたっていると感じました。わたしたちの立てた問いが間違っていることはわかっていましたが、なにが正しい問いなのかわかりませんでした。そこでわたしは仮の報告書を提出し、休暇を願い出たのです。
――確認したいのですが。その報告書の結論は?
――それをつくったのはわれわれではない。
(巨神計画 上 (創元SF文庫)(Kindleの位置No.237-242))
異星人が3000年前に送ってきた巨大ロボットの部品を地球上から集め、組み立て、操縦し、運用する――そんな与太話をインタビュー文体で真面目に書いたSF小説。
長期的なシリーズの序章にもあたるようで、派手なアクションはなく、ロボットが大活躍をするわけでもありません。
ロボットに関して、部品は地球上のどこにあるのか、完成系はどんな形をしているのか、人間とは異なる造型のロボットを人間がどう動かすのかという科学的なトライ&エラー、未知の巨大ロボットがある日常が訪れたらどうなるかを表ざたにならない組織から一から書いたサスペンス、この2つが物語の軸となっています。
その軸と語り手と聞き手に分けて一つの方向に話を転がしていくインタビュー文体との食い合わせがよく、ページをめくる手が止まりませんでした。
細かい中身――善い科学者、操縦士の三角関係、一丸になれない人類――は良く考えなくても新規性のあることは全くしていませんし、じみーーーな展開が続きますが、兎にも角にもお約束の魅せ方が上手。
ロボット物をこのように書こうとした発想と、きちんと書き上げたことは賞賛に値します。エンタメ作品としてお見事。
欠点としては国家間のポリティカルの描写があんまりにもちゃっちいことでしょうか。北朝鮮関連は正直興ざめでした。王道とお約束に、複雑過ぎる設定は邪魔な場合はありますが、あれはちょっとどうかというレベルではありました。
さて。単体としての作品の魅力はもちろんですが、シリーズとしての引きもばっちりです。
――万一彼らがわれわれを絶滅させることに決めたら、何体のロボットを送りこんでくるでしょう?
(巨神計画 下 (創元SF文庫)(Kindleの位置No.1796-1797).)
あの終わり方――あれもまたお約束の中のお約束ですが――で、続きが気にならないはずがありません。
幸い続編の「巨神覚醒」は既に出版されていますので、またkindleでセールになったら手を伸ばしたいと思います。
以上。手軽に楽しめる良いSF小説でした。
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