アルマダ 上・下 雑感

 鬱屈としたスクールライフを過ごすオタクの男子高校生の前にシャトルが衆人環視のもとで降り立ち、ダークスーツを着た捜査官が地球を救う戦いへと誘ってくる。彼は騒ぐ周囲を背に一歩非日常へと踏み出す――

 ついに来たぞ、ザック。おまえがずっとずっと待ってた冒険の誘いだ。それがいま、目の前に立ってるんだ。
  (アーネストクライン.アルマダ上(ハヤカワ文庫SF)(p.128).)

 SF映画とゲームとロック――アメリカのオタクの文脈と引用で修飾されきった長編SF。
 父が残した謎めいたノートに記された陰謀論VRゲームの腕前が現実のドローンの操作にも適応され、ゲームのランキングが尊敬を惹起し、選ばれし存在として世界を救う戦いに挑む、そして一目惚れしたクールな年上ヒロインと良い感じになる。
 もう、これぞボンクラだと言うボンクラオタク小説でした。
 至る所でボンクラさで殴り続けられるのもまた一興で、偶にはこういうのもいいかなという変な感慨を抱くようになります。
 前作のゲームウォーズもそうだったのですが、照れもなくこういうのをストレートに書くのは一つの才能だと思うんです。面白いかと聞かれると、まあ面白くはないんですがね。でも選ばれたオタクが戦士として戦う作品からじゃないと得られない栄養素を取るにはこういうのを読むしかないんですよ、ええ。


 以上。純度の高いアメリカンのボンクラを味わいたければ一読もなしよりのありかなという気がします。

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