戦闘破壊学園ダンゲロス 感想

 ネット上で出来るウォーゲーム『戦闘破壊学園ダンゲロス』の発案者による商業小説という形式になっているようです。『ダンゲロス』は寡聞にして初めて知りましたが、盛況のようでありコミケなどでも創作が出ているとのこと。遅かれながらこれから注目してみたいと思うほど、本作を読んで興味を惹かれました。

 
 特殊能力に開花した魔人たちが世界を跋扈し、能力に準じる限り何でもありの群像劇を繰り広げるという世界観のもと、本作では魔人が生徒会と番長グループに分かれてハルマゲドンを起こすという内容になっています。
 まず何よりも、この“能力に準じる限り”に実に燃えました。
 己の能力で出来ることを知り、味方の能力を組み合わせて出来ることを思考し、敵の能力を推測し、戦場における最善の手法を取る。これぞまさしくウォーゲームのノリなのですが、そのノリを小説ベースで完全に再現していました。そこが素晴らしい。リプレイという形ならプレイヤの丁々発止が伝わりやすいのでしょうが、キャラクタ視点で書いて小説として読ませ、なおかつウォーゲームの雰囲気を伝えるのですから、こうした小説の最良の部類に入るのではないでしょうか。
 しかも嬉しいことに“戦略”の立て方は決して単純ではなく、敵の情報の多寡に拠ることが示され、最善手をとれば個体間の能力差はひっくり返しうるという複雑さをきちんと持っていました。情報収集の仕方も能力により様々に考えられており、徹頭徹尾味方と敵のアクション−リアクションを辞めず、ご都合主義と興ざめることはありません。
 同時に戦略を覆す“運”――正確に言えば“横槍”の入り込み方も巧みでした。情報による推察が交差する戦場を、第三者が自らの目的の為に殴りつけることで変化するのは見物でした。


 加えてゲームの駒たるキャラクタは立っていて物語を提供していましたし、彩るエロもグロもナンセンスも特殊能力と合わせて派手でした。結構エログロであるというのは強調しておいてもいいかもしれません。左絵の切断絵を読めるのは『戦闘破壊学園ダンゲロス』だけ! 出来るなら、もうちょっと左絵のエロが欲しかったですが……。
 兎も角も、本作のエログロのノリは読んでいて筒井康隆平井和正のハチャメチャな小説を思い出し、懐かしかったですね。


 以上、滅法面白かったです。なお余談ですが、個人的には『大悪司』を思い出し、猛烈に再プレイしたくなりました。

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 参考-【ダンゲロス】二次創作小説サイト
     戦闘破壊学園ダンゲロスwiki - トップページ


 

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