血界戦線 1-10 雑感

  3年前ニューヨークは霧に包まれ、一夜にして異界と接続された。混沌に満ちた新たな街はヘルサレムズ・ロットと名付けられて、世界の最前線にあった。危うい世界の均衡を超人秘密結社・ライブラが密かに保っていた。ライブラに神の眼を持つだけの普通の青年が訪問した時から、物語は始まる――

 という『トライガン・マキシマム』の作者による新シリーズ。既に2ndシーズンまで来ているのですが、1stシーズンをようやく読み終えました。
 基本的には1話完結の連作短編形式となっています。世界の危機に繋がるトラブルが飽きないのかと言う頻度で巻き起こって、その解決に駆けずり回り大立ち回りする――というのがおおよその毎回の流れ。
 これがまたべらぼうに面白かったのです。いや押しも押されぬ人気シリーズに対して今更言うことではないのかもしれないのですが、びっくりするぐらい作品の質が高かったです。

 複数の超人が、己が矜持をもって世界を守る。 

 描かれているのは言ってしまえばただそれだけなのですが、彼らが無暗に肩肘を張らず偶には大いに息を抜きながらも、戦いに対して全力を尽くす在り方が格好良い。それに世界の危機のアイディアもそれに対抗する手段も手を変え品を変え目線を変えてくれるので、飽きるとかふと作品から醒めて冷静になるいうことが全くありませんでした。
 何よりですね、繰り返しますが、作品で描かれる格好良さが本当に心地良いんですよ。決め台詞は勿論のこと些細なシーンでのちょっとした台詞回しが、アクションの画が、痺れる。例えば、敵に止めを刺す時の台詞。

 憎み給え
 赦し給え
 諦め給え
 人界を護るために行う我が蛮行を
 ブレングリード流血闘術999式
 久遠棺封縛地獄
  (2巻 NO.182-183)

 これが輪をかけて無茶苦茶クールな絵で表現されてしまったのを目の当たりにして惚れないことがありえませんでした。

 そんなこんなで古典的かつ現代的な騎士の物語――ヒーロー物の文脈で生まれた大傑作かと。

 どれもこれも面白かったのでなかなか決めにくいのですが、敢えて好きなエピソードを3つに絞って巻数順に上げれば以下になります。

  • 『世界と世界のゲーム』(2巻)

  「プロスフェアー」というボードゲームで全てを賭けて丁々発止する机上の戦闘が魅力たっぷりに描かれます。
 こういう作品内の架空のゲームを強度のある形に出来たら、まあ大勝利になりますよねと。
 あとライブラのリーダー・クラウスさんの熱い在り方に惚れました。
 

  • 『拳客のエデン』(4巻)

 クラウスさんが地下拳闘のリンクに立つ話。
 これまでさんざん派手な異能対決を見て来ての、1VS1のスデゴロ。
 これがまたまた良いんですよ。オチの絶妙な寂寞さが大好き。

  • 人狼大作戦』(6巻)

 存在濃度を調節することでいかなる手段によっても察知されなくなる異能を持つ人狼
 センサーが張り巡らされたミサイル施設へ人狼たちが侵入するミッション――もうこれまた画的に栄え栄えでぞくぞくしました。
 消えながら落ちていく人狼たちが最高に素晴らしい。

 
  (6巻 No.103)


 あとあと誰もが美味しさによってキャラ崩壊するギャグ調の8巻所収『王様のレストランの王様』とか、言い出すときりがないですね・・・。これから感想を漁ってそれぞれのお気に入りを推す楽しさを堪能してこようと思います。

 以上。オールタイムベスト級に好きなシリーズです。

  • Link

 血界戦線―魔封街結社― 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
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 血界戦線―妖眼幻視行― 10 (ジャンプコミックスDIGITAL)
  B00W9NRS9W