VA-11 Hall-A 雑感

 ヴァルハラに勤める女性バーテンダー・ジルとして客にカクテルを提供しながら身の上話を聞いていく――というスタイルのビジュアルノベル
 "Cyberpunk Bartender Action"と銘打っていますが、別にアクションはありません。

 酒の名前とわかりやすいものから味や雰囲気という漠然したもの、或いは"いつもの"とか"お気に入りの"まで注文がくるので、右の欄の材料をレシピを見て配合するというゲームシステムです。偶に言われた内容が正解ではなかったりするので、少し考えながら正しいカクテルを提供し続けたらエンディングのフラグが立ちます。
 逆に誤ったカクテルを出した際やアルコール分大目に出した際の反応はにやっとくるものがあり、シェイカーに何回も材料を突っ込むのがちょっと面倒ではありますが、1-2周遊ぶには悪くないゲーム性でした。
 

 ビジュアルノベルという事で肝はシナリオ。
 世界背景はヒューマノイドやナノロボットなど技術的には発達したものの、テロが頻発し治安組織も腐敗した近未来。webニュースやTV番組、噂話でそうした暗い社会の騒々しさは伝わってくるのですが、ゲームが進むのは基本的にバーと主人公のアパートの部屋と密室なので、そこまで世界の広さを感じるわけではありません。ただ人間の拡張と、それが当たり前になった未来を現在形として個人の物語を語るのは正しくサイバーパンクの手つきでした。
 では物語られるのはと言えば――女性同性愛と友情になるでしょうか。
 百合物としてかなり楽しめました。
 主人公のジルはビアンで3年前に喧嘩別れした元彼女が心残りで恋に臆病になっています。そんな見た目はクールで中身は傷ついた乙女心のジルがバーの経営者にしてカリスマ性の高いディナ、義手の凄腕ハッカーにして金髪ボインのアルマや、アンドロイドで娼婦のドロシー、アイドルのキラ☆ミキなど魅力ある女性陣にシェイカーを振ってカクテルを作りながら、身の上話やバカ話をして仲良くなっていく毎日は楽しいものがありました。
 なお上で百合ゲとして女性だけを上げましたが、男性陣もまた愉快な面子で。

テイラー:ここにいるのは、世界五大瓶詰の脳のうちの1人である。

 あたりのくだりとか笑えました。
 その他、日常を彩るテキストも面白く、下ネタから重い話までの振れ幅があり飽きませんでしたし、小ネタのWebニュースのオタクネタとかプロレスネタとかの散りばめ方も練られていました。
 それにそういう文章の差分の出し方もスマートでした。スマフォをタッチしてwebニュースやアイドルのブログを更新するのは言うに及ばず、酔い加減によって文章が変化するのには気づかない危険性もありますが、気づいた時のしてやられた感は爽快。
 例えば1章ラストのボスとの会話で酔っぱらわないとさらっと終わるのですが、酔っぱらうと凄い"あけすけな"女の会話になりさがります。

 いや、どうしてこうなった。


 なおカップリング言えばディナ×ジルが主従系が鉄板。ディナの着たパーカーを部屋着として使うジルがかわゆす。
 あとはジル×アルマの友情系もおいしかったです。


 ビジュアルも好みでした。
 特にドット絵風で味のある一枚絵が非常にキュート。
 例えば、部屋でジルがネコとこたつでくつろぐものとか、ボスと一緒にベランダで飲むものとか。


 ちまっとしたキャラのデフォルメの表情が可愛いですし、小道具にも不思議な魅力がありました。


 そんなこんなをひっくるめて制作陣のクオリティコントロールは抜群で、ビジュアルノベルとしては文句なし。世評が高いのもむべなるかなと。


 以上。シナリオ・ビジュアルのクオリティが高い良い百合ゲーでした。

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