あさひなぐ 1-21 雑感

 運動音痴の女子高生・東島旭がひょんなことから薙刀部に入部し、0からのスタートながら必死の努力で成長していく――という部活動物の王道。
 評判が良かったのでkindleで手に取ってみたのですが、一気に最新刊まで読んでしまいました。
 物語に籠められたむっちゃくっちゃ膨大な熱量が凄い。手に汗握るどころか全身汗ばむくらいに没頭しました。


 個人的に部活動物の良さは未熟な少年少女が競技者としてレベルが上がっていくのと思春期の人間として成長していくのと両方がパラレルに味わえることにあると考えているのですが、その面白さの期待を想像以上に応えてくれました。


 まずは薙刀の面白さ。作者は全くの門外漢だったみたいですが、同じ様な門外漢の私が読んでいて面白さが伝わってくるような機微を表現出来ていると思います。そして人生の何割か――あるいは時にとっては全てをかけるに値するようなものだと描けているからこそ、主人公を筆頭とした競技者の懸命さがリアルに伝わってきました。主人公――素人がくじけたくなりながらもいつの間にか技術が身につき薙刀が好きになったと胸を張って言えるようになった時の爽快さはこのジャンルでしか味わえない感触でしょう。また同系統の名作で『帯をギュッとね! 』があるのですが、同年代の同じ人間と何度も戦うことでライバル関係がどんどん募っていくのもまた部活/スポーツ物の醍醐味かと。


 あるいは人間としての成長。高一の時に見た高二の遠さと高二になって知った先輩としての在り方という戸惑いとか。将来はそれはそれで大事だけど、ちょっと時間が進むと全く違う人物になっているように急激に成長していく高校生の彼らには、『今』がかけがえがありません。今競い、今共に過ごすことで、得るものの尊さをきちんと描いているため、一コマ一コマ、一話一話の眩さに惚れ惚れとしました。

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    (『あさひなぐ 21巻』より)

 いやあひっくるめて若々しい少女らが今を盛大に燃やす青春、青春の物語なんですよ。
 これで面白くない筈がありません。
 同級生でライバルの八十村将子、憧れの先輩・宮路真春、熊本から転校してきた他校のライバル・一堂寧々etcetc、彼女たちのそれぞれの人生のきらめきを堪能しました。


 Kindleで出ている21巻がここまで終わっても良いぐらいにキリが良いので、今ちょうど入るのにお薦めです。
 

 以上。名作でした。

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