以前プレイして名作と受け止めた作品をリプレイしよう企画、その1。
備忘録なのであまり長々とした文章は書かないつもりです。
さて、かつて最高の幼馴染物の一つと惚れこんだ作品は、相変わらずとんでもなくばか高い幼馴染ポテンシャルを有していました。
序盤は主人公が記憶よりもあまり紅葉にべたべたしておらず、逆に新鮮でした。それはそれで恋愛を介さない幼馴染の空気として楽しくはありましたが、恋愛を意識してからの糖度100%の甘ったるさの方がやはり好ましいものでした。というか凄い、メッチャ好き。
縁側で髪切ってもらったり、勉強の夜食で焼きおにぎりを一緒に食べたり、ファーストキスからのキス100回したり。何気ない毎日が、愛おしい幼馴染と過ごすことで多幸感に溢れる様を見事に描いています。この幸せを体験出来るだけでもこの作品は自分にとって特別なものとなりましたし、矢張り特別なものとして間違っていませんでした。
そして兄に異常なほどべったりとなついていた妹・桜を心を鬼にして突き放す一連と、己の寂しさも含めて紅葉に溺れていく流れと、最後の桜からの卒業の証。
桜が一人の人間として生きて、誰かと恋をし、その人が最も身近になるようになることになる未来に心がねじ切れます。でもそれが正しいと、隣に立つ最愛の幼馴染がいるからこそ宣言できる。ああ、なんて見事な思春期の終わりの構造でしょう。
桜の心の痛みと成長をもさらっと示す、完璧なシナリオ構成だと思いました。
演劇のシナリオとか住み場所とか周りの反応から人物関係を考察しようとすれば、いくらでも考えられる懐もありますし、かなり興味深い所まで突っ込むこともできますが、幼馴染と幸せになった――まあ、それだけでもいいんじゃないですかね。
なお本作品で個人的に一番気に行っているのは以下のシーン。
医者の息子と下校時に将来のことを話し合って曰く、
「うーん。おまえひょっとして、あんまり医者になりたくない?」
「…いいや。ボクはそれを望んでいる。ただ何故望んでいるのか、よくわからなくなることがある。それだけだよ」
「よくわかんないけど。おまえが医者になって瀬良医院にいてくれたら、うれしいし、安心できるよ、僕たちは。僕はもう…よっぽどのことがない限り、ここで暮らしていくと思うし」
紅葉と、秋野家のみんなと、桜と。
夕方になったら、紅葉と腕を組んで買い物して、龍馬に冷やかされて。
時にはみんなで集まってこの学園のでのことを振り返ってみたり。「そう、か。そうだな。キミたちの助けになれるのだと思えば、それだけでも何かしら意味はあるのかもしれない、ボクの選んだ道は」
――ありがとう。
そう言って、照れくさそうに笑う邦彦。
何年か何十年か先――
この町でこいつと顔を合わせた時。
忘れていなければ、今のやりとりを思い出させてやろう。
何気なく、そして何気ないからこそ眩い、その言葉。恐らくはこれ以上ないモチベーションに繋がったでしょうし、彼にとって一生の救いとなることでしょう。
こういうシーンをも体験してしまった以上、この作品を愛さないという選択肢はありません。
以上。やっぱりエロゲオールタイムベストの1作でした。
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なおプレイ当時に参考になった記事はこちら→我が愛の不滅を語らん - 独り言以外の何か