2020年3月11日 東京で原子爆弾を爆発させるとテロの予告がされた。未曽有の大惨事になるタイムリミットまでに犯行を防げるか――
長編サスペンス。
東京で原子爆弾を爆発させるために準備するテログループ、スペシャリストの視線からテロに用いられうる原子爆弾を予測・解析する国際原子力機関の職員ら、テログループを追う警察組織の3つの視点から書かれています。
原子爆弾のために、どこまで高品質の燃料を用意し、どのように設計し、どこに設置するのか。
2020年現在の時点で使用できるテクノロジ――3Dプリンタや高精度のスマートウォッチ、2020年現在の時点で使用できるロケーション――例えばコンペティションと費用のごたごたしている新国立競技場に基づいて、テロを行う立場と追う立場の両方から東京で原子爆弾を爆発させる所業を突き詰めることで極めて解像度の高い物語になっていました。
その上でテログループ内で"核をもう一度"の目的の齟齬が明らかになってからより緊迫性が増していき、読む手がもう全く止まりませんでした。
そして東京――世界/大震災後の日本の首都に生まれた原子爆弾と起こりうる放射能汚染の危険性の意図が分かった時には膝を叩いた次第です。
このありうるシミュレーションの強度に加えて、ダンスに隠された暗号やクライマックスでの恐ろしい青い光に立ち向かう姿といい見たことがない絵になる情景の描写が上手いのだから面白がる以外ないかと。
以上。サスペンス小説の秀作でした。
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