副題――野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか――そのまんまのファンタジー戦記物あるいはウォーシミュレーション物。
"剣と魔法”から"銃と魔法"へと移り、そして近代化が進む世界において、なぜ白エルフが統べる国はオークに攻められることになったのか。そしてオークたちは攻めるためにどのような努力を重ねたのか。
書かれているのは、戦争の準備と、戦争そのもの。
架空であればこそ、全編に満ちるいくさへのダイナミズムは心が躍るものでした。
ひたすらに諜報して情報を集め、天才鬼才秀才が全身全霊をかけて計算を尽くし、戦略を立てる。
戦略に基づいて、大飯ぐらいのオークたちの万の兵をいかにして食わせるか――という兵站と、陸と海と空にいかに兵を送り込むか――という交通と、亜人の特性に合わせた軍隊編成とエスカレートしていく火力の兵器の開発を急ぐ。
小説では2巻、漫画では4巻をかけて、ねっとりと準備が済んだら、あとは戦場へ。
100年以上にもなる執念の果てのファーストアタックは予測通りにいくのかいかないのか。
そして戦場のロマンはかなたに、近代化による火力は大いなる被害をもたらし凄惨で酸鼻な死が無慈悲におとずれるが、それは互いにとってで、予想通りにいくはずもない戦線の推移と相手の反撃がどう出るのか。
小説に書かれることのなにもかもが手に汗握る展開とはこのことで、読んでいて面白い!と唸ることしきりでした。
小説の4巻はいいところで終わって続きがたまらなく気になるのですが、原作のweb小説にあたるのはぐっと我慢して商業出版を待とうと思います。
なお小説は数字多めで男と爺の渋さがあってこれはこれで最高ですし、漫画は黒エルフ視点で整理され作画の漫画家ならではの艶やかさが加わって読みやすくわかりやすいですし、どちらもお薦めの出来。
以上。快作、文句なしにお薦めです。
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