妄想少年観測少女1 感想

一番古い記憶は幼稚園の頃だ
オレはその頃からこの衝動があった
  (P4-5)

 この漫画は少年少女たちの思春期の衝動を連作形式で描いています。
 衝動を具体的に言えば、“綺麗な肌にボディペインティングしたい!”だとか、“好きな娘の忘れ物を収集する!!”だとか、“好きな人の本を執拗に追い求める!!!”だとか、些かフェチった方向に行っています。
 そして、それぞれの衝動が一対となりうる少年少女たちが出会ってしまった――というのがこの本の上手い所。少年少女のそれぞれを視点にした2話がセットになっていて、比翼連理を形成しています。
 例えば第1話は“綺麗な肌にボディペインティングしたい”少年が視点人物です。外見はいたって普通であり、友人たちと馬鹿話を繰り広げます。しかし彼の心は、光の中を歩く理想的な肌を持つ美少女に紅い線を引くのを妄想しつつ、薄暗い部屋の中でフィギュアを塗りたくるという、悶々としたナニカに満ち満ちています。その妄想は叶わぬと知り、現実を生きようとするのですが、豈図らんや。希求した存在の方から懐に飛んできます。そして、

相原くんのソレ
理解できる
  (P26)

 妄想の対象であることを理解され、あまりにもご都合主義に報われます。但し、それだけではなく、彼女も同様に彼を妄想の対象としていた――というのが明らかになるのが2話目の少女視点となります。互いの妄想を充足させうることが判明し、彼らは思春期。あっという間に互いを貪り食う夢空間に突入します。後は妄想の対象のみにされて相手がどう想うかを解決するだけで、それはもう物語のおしまいを盛り上げるツマにしかなりません。何せ悦楽園から抜け出せるはずがありませんから。
 

 つまり、この漫画はこのように、まず少年視点から妄想起点を描き、次いで少女視点から別の妄想起点とベクトルが合致するまでを描いています。タメと爆発が効果的であり、実に甘美な妄想の承認感を味わえました。
 後はうん。やっぱりエロいのは良いことでしょう。


 以上。ライトなフェチ物を求める方にお薦めです。

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