素晴らしき日々 雑感

  • 感想

 踏み込むと面倒そうなので、今回は簡単に行きます。
 なお先に言っておきますと思い出補正ありで『終ノ空』が尖っていて素晴らしかったのに比べるとちょっと温くなっているかな、と考えていますのでご注意ください。



 さて、内容を個人的にざっくりとまとめると、登場人物たちはそれぞれの素晴らしき日々に辿り着くために様々な問いを問い掛けられ或いは問い掛けて、迷って答えを出し――過酷な現実を乗り越えていくというもの。問いは死とは/生とは、在るとは/無いとはなど漠然としたものでありながら、各々の立ち位置に密着していていて、一層に答えるのに容易なものではなくなっています。
 答え方もそれぞれと言っても条件は二つ。答えられないものに答えないこと、そして奈落を見ないように。そこでデッドラインとして働く彩名は『終ノ空』に引き続いて語り得ぬものとして健在です。
 

 構成は章立てになっていて、Down the Rabbit Hole、It's my own invention、Looking-glass Insects……というように『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』からの引用になっています。そしてそれぞれ語り手が異なっていて、途中まではほぼ一つだけの選択肢を選択することになります。一つは意図された流れ、もう一つは外れた流れです。外れた流れでは外れたなりに誰かが幸せになります。ひょっとしたら誰もが。
 そして幸せの意味を知りたいかと改めて問いかけられます。

【彩名】「あなたは素晴らしき日々を手に入れて、そしてそれ以外のものを失った……」
【彩名】「だから、あなたはその質問の答えを得る事は出来ない……それとも」
 彩名さんがにやりと笑う。
 私は何故かその瞬間に背筋が凍る様な思いがした。
【彩名】「今をすべて捨ててみる?」
【彩名】「そして違う魂の行方を見てみたい?」
ざくろ】「……」
ざくろ】「わ、私は……」

 先は決まりきった奈落ではなく、決められてなかった自らの道ということで綺麗な選択肢の在り方でした。


 或いは「バカ……」という万感の台詞になだれ込む一連の屋上のシーン。救世主/救おうとした少年と復讐者/贖おうとした少女との邂逅――その“モノローグ”の美しさは極上でした。
  

 また進めていくうちに情報が増え、真相に近づいていくことになるのですが、そこらへんについては他の方の感想をどうぞ。個人的にはぶっちゃけ興冷めでした。

  • 希実香

 小段落に分けるほどに好きです。付け加えるならこんな彼女が作った毒ガスなら吸ってもいいと少しだけ思わなくもないぐらいには。
 第3章では恋する乙女としての可愛い嫉妬を示し、それはそれで可愛いのですが、何よりもダメ理系脳から発揮される言動がとんでもなく良かったです。いじめられている状況からどう覆すかを冷静に考え、蛍光灯から割れやすい容器を作って納豆菌を封じたものの作り、その作成手順を嬉々として語ったり、エストレイマ・ラティオ・BF2・タクティカル・タントーを嬉々として振り回したりと過激に魅力的です。それに貧乳なのは汚い言葉ばかりを使っていて女性ホルモンが少ないからだと暴言をはかれたときに、

「なんだそのオカルト! この文系脳がっっ。んな学説どこにあるんだよ! ソース示せ! データ示せ! 参考論文示せ!」

 と激昂します。その可愛く正しいダメ理系の在り方に乾杯です。

 
 打って変わって第2章でのルートでは間宮卓司との主従関係が実に楽しげに描かれていました。そう間宮が打ち立てたラリラリパッパなカルトが見事にラリラリパッパに描写されています。はっちゃけ過ぎですが、それはそれで良し。これだけでも爆笑ものなのに希実香の関わり方が最高でした。理系脳を駆使して裏で表で救世主・間宮を盛り立てます。「しょうがないなぁ、救世主は」という声さえ聞こえてきそうなつくし様です。間宮がフェンリルとかグレイブニルとかヨルムンガンドとかイケイケに説教している最中の椅子の代わりを志願して、重さにぷるぷる震える様の可愛いダメさなんか、もうね、抱きしめてたい。
 それは多分盲目的ではない、狂信的ではない、信仰。
 果てに報いがないと信じた、彼女の答え。
 でも感想の最後で述べたような台詞――「バカ……」を吐いてしまって完結します。何をとっても完璧でした。


 こんな感じに希実香に会えただけでもプレイした甲斐があったと言い切ってしまえるぐらいでした。

  • エロ

 感情を表さず何を考えているか分からない少女をふたなりにしてしごいて悶えさせるとか、強気な少女を人前で自慰させるとか『終ノ空』で大好きだった陵辱系のエロが引き継がれていて大方満足なのですが、ただ一点浣腸が無くなっていたのがいたく不満。や、不可能なのは承知なのですが――物理的に。
 加えて性的ないじめシーンが多かったですね。露出させたり、バカやらせたり、後は誰得な女装男子に自慰させてフェラさせるとか、それなりに陰湿でした。しかし何で教室でノーパンワルツさせるシーンは回想に含まれなかったんでしょうかね。勿体無い。
 女×女のシーンもちょいちょいあるのですが、特にその描写の出来がいい訳ではないと思います。
 

 しかし浣腸……(そういうゲームではありません)

  • まとめ

 以上。シナリオの出来はよく、判りやすいオタクネタが大目で、哲学・宗教だけではなく古流武術によるマトリックスばりの戦闘・いじめからの反抗など間口も広く、オチは爽快と、大変楽しめる作品となっています。お薦めです。

  • Link

 OHP-ケロQ


 参考リンク-素晴らしき日々〜不連続存在〜 @まとめwiki - トップページ
        『素晴らしき日々〜不連続存在〜』で引用された本と音楽 - とおくのおと出張版


 












 

  • 以下妄想

 正しい流れでは間宮卓司が余りにも救われない。だから私はIt's my own inventionの希実香エンドこそを肯定します。