うたわれるもの 偽りの仮面 雑感

 記憶を無くした青年は旅をする少女・クオンと出会う。クオンは人間にはない筈の耳としっぽがあり、そして逆に耳としっぽが無い存在は彼だけだった。
 クオンは彼をハクと名づけ、鉄扇を武器として貸し出し、彼と共に旅を続けることになる。
 その出会いから、平和な時代は終わり、戦乱の嵐が巻き起こり、新たなる王が生まれる――


 
 リテイク/新たなる覚醒へようこそ。或いはオーバーロードアゲイン。
 かつて居た王の名前を僕らは知っている――


 ということで、前作うたわれるものの続編です。ジャンルは同じくシミュレーションRPG。前もって語られていたように3部作の真ん中であり、本作単体で完結するものではありません。ボリュームも短く、15時間足らずでクリア出来てしまいます。流石に傑作たる前作と並び立つものではないのですが、それでもシリーズの名を汚すことはありませんでした。


 序盤ではぐうたらだが冴えたところがある青年が事件を解決しながら仲間を増やしていくパートが描かれ、中盤では主人公の秘密が明かされるパートが描かれ、それはそれで悪くはない代物でした。
 ただ目玉は終盤。主人公の雇われた國・ヤマトが前作の舞台であるトゥスクルに戦争を仕掛け、戦記色が増して行くところから、ぐいぐいと惹きつける魅力が増していきます。
 前作の舞台に攻め込む一助となる悲しさなんて些細な味付けでしかありません。トゥスクルを敵に回した脅威/恐ろしさが判るあたりの大見得がまず嬉しい。

【クオン】『あのヒトは……きっとここにいる――』
      『機が熟した時、あのヒトはこの戦場に現れる――』


 『トゥスクル侍大将、ベナウィ――』

 これよ、これ! という、ぞくぞくする戦場の昂りとか、前作の味方たちが時を経て確固と生きているのを目の当たりにした感動とか、いろいろ相まって胸がいっぱいになるシーンが重なっていきます。武を張り策を練る面々による激動の時代を見事に描きだしていました。
 前作と同様に奇を衒った展開は全くなく、ただその王道の力強さを武器にプレイヤをぶん殴ってくる構成は大好きです。もう十二分にファンタジー戦記を堪能しました。


 キリは良い上に、ここで終わるのという絶叫するような先の気になり加減は橋渡しとしては大成功と言って良いかなと。
 あの締め方ほんとに大好きです。

 俺の名は――

 という覚悟と、

 双子と思わしき同じ顔をした少年が前に出ると、うやうやしく少女に跪き白い外套を差し出す。

 という運命への回帰の交差。
 ――先に待つ炎と死体が積み重なる不可避の戦乱の未来と、感情と刃を交わす予感。その想像しうる密度の豊潤さに身震いしました。


 ただ第2部として次の作品とひっつけて出せばよかったじゃんという意見には反対する余地はありません。無理やり分割して、量的に中途半端にしてしまった感はあります。でもまあ痘痕も靨ということで許容しちゃいましょう。個人的には揃ってからプレイしているので一気にやれるというアドバンテージがあることが寛大になれている原因かもしれませんが。


 シナリオメインで語ってきましたが、ゲームとしての評価もそう落ちるものではありません。
 前作の素朴すぎるタクティカルRPGから色んな面で進化していました。隣接によって特殊効果を発揮する『陣』でかなり優位に行動出来るので強キャラの単騎掛けに陥らず、非行動時でも相対すると発動するパッシブスキルは移動時と立ち位置・攻撃方法の選択の戦略性を増していました。2つの行動後の予測が出来たり、50手まで巻き戻せたりと一通りの便利な機能は揃っていました。
 強いて文句を言うなら必殺技がそこまで格好良くないことぐらいでしょうか。


 以上。

 ――その修羅の中身が語られる続編が楽しみです。


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