今この漫画が熱い(自分の中で)

 単行本化している漫画で、現在展開が盛り上がっているシリーズを選んでみました。

 既刊:3巻まで
 軍靴のバルツァー 3 (バンチコミックス)
 架空近世欧州戦争物。
 政治的にも軍事的にも優秀な青年軍人が弱小の隣国の士官学校に赴任するという内容。
 本作において戦争において騎兵隊が未だ戦力のメインを張る時代となっています。しかし、自転車の原型のようなものが現れたり、鉄道網が引かれつつある最中だったりと、戦争の形が徐々に変わっていくこととテクノロジーとインフラがどんどんと進歩していくことをダイナミックに描いています。
 また士官学校物としての要素も上手く描かれており、少年時代から脱却しかけている生徒たちと青年軍人との触れ合いは素直に楽しめます。
 上記の2つの要素をひっくるめ、動いていく時代にこれからどう生きていくのか――ということを描く群像劇として優秀でした。読むなら3巻まで一気に読むことをお薦めします。2巻まで買ってしまうとそこで終わるのかと悶えて、3巻を買いに走ることになるので、先に3巻まで買ってしまえばいいんじゃないですかね。

 既刊:8巻まで
 シドニアの騎士(8) (アフタヌーンKC)
 人類最後の生存者たちを乗せた大宇宙船が謎の生物・奇居子と戦いながら、存続の旅を続けるという話。
 ハードSF活劇で、〈継衛〉という機体を駆っての宇宙空間での戦闘は"莫大な距離"を実感できそうなSF心をくすぐる出来ですし、奇居子による触手によってパイロットの美少女たちが酷い目に遭いながら無惨に死んでいくのもフェチ心をくすぐられました。
 というか、全体的にフェチ大爆発しています。ゲロにまみれた美脚とか、パイロットスーツで尿道口が攻められてぶるっとなったりとか、色々。その傾向は徐々に増大し、近刊では超巨大な触手ヒト型ヒロインという、ニッチをついた生き物が爆誕しており、お話を喰っています。
 フェチSFロボット物が読みたいならお薦めです。

 既刊:4巻まで
 狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)
 ドイツとフランスの国境にある関所はオーストリアハプスブルク家によって通行を厳密に管理されており、その地域の住民たちは国境間の移動を完全に制限されていた。そこでは密行を企てた者は全員が暴かれ、処刑されることから<狼の口>と呼ばれた――という感じの内容。
 内容を一言で言えば、残虐中世活劇。
 容赦のかけらもなく、弱い立場の人が殺されていきます。処刑方法は断首は序の口で、首つり鳥葬だったり、逆さ喉斬りだったりを、美麗で迫力のある絵で余すところなく描写します。また反逆を企てて、色々な方法で刃向かおうとするのですが、そうした輩に対する峻烈な殺し様は半端のはの字もありません。煮え立つ油とか鉛をぶっかけて、どうなるかをある程度真っ正直に描かれると、もう参りますね。加えて、関所の主の有能さと、オーストリアの軍隊の優秀さも際立っており、反抗軍の企てが成功する可能性のなさ加減は絶望としか言いようがありません。こうした残虐性のエンターテイメントっぷりは他者の追随を許さないでしょう。
 窮地っぷりを楽しみ、読みながらオーストリアへの憎しみが増していくだけでもそれはそれで面白いです。しかし、反乱が潰えて、希望が潰えて、心が潰れて――にも関わらず、液体が沸騰する始まりのように、徐々にはかない泡が立ち上っていき、割れずに反抗が形になっていくのはもの凄い心が躍りました。
 そして最新刊の4巻をご覧じろ。関所を落とそうとする大反乱がようようお目見えします。まあ、これもほぼ9割9分失敗しちゃういそうになるんですがねー。ここまでやっても策が通じないなら、どうしようもないと思っちゃいそうな、難関ぶりでした。
 だから。
 3巻とP159を費やし、味方の死体に死体を重ねての、あの表情と言ったら! カタルシスここに在り。与えてきた死が、とうとうお前に追いついてきた――という感じ。
 そんなこんなで、残虐で非道で反抗の物語を読みたいなら、このシリーズをお薦めします。これまた丁度良いところなので、最新刊まで一気にどうぞ。

 

  • KEYMAN

 既刊:3巻まで
 KEYMAN 3 (リュウコミックス)
 獣人と人間が共存する世界で、キーマンという超能力ヒーローが殺された。キーマンは人助けをして社会手的人気があり、死んでも刃物が皮膚を通らない肉体で在った。そんなヒーローを、誰が、何のために、どうやって殺したのだろうか。恐竜刑事のアレックスは謎めいたヒーロー殺人事件を通して、騒動に巻き込まれていく――
 という感じの内容。戦闘は獣人たちや魔法使いのど派手な殺陣を濃い絵で迫力満点に描いています。それに地味でハードボイルドな刑事物としてもよく描けています。そもそも"恐竜刑事"という時点で勝利が決まっていた感がありますが、アレックスの造形が素晴らしかった。どこをどうとっても恐竜で、頭のとんでも固くて――人情味があって仲間意識が強いという刑事で、意外とお茶目で、種も仕掛けもない肉体一本だけで不条理と互角と戦える程にむちゃくちゃ強い。
 久しぶりに見る名主人公でした。
 濃い絵で熱い内容なので歯ごたえありますが、めっさ面白いので是非ご一読を。