素晴らしき日々 10th Anniversary特別仕様版に収録された1作。
リメイク前の原典はなんじゃこりゃあと魂消げました。漂う終末と思春期の焦燥感、どんどん外れていく世界の箍――その上でふたなりや浣腸といった気合の入ったエロありありに心を躍らせました。そして本当に偶々2週間ぐらい前に映画「ヴィトゲンシュタイン」を観てからプレイしたというシンクロニシティの驚きを含めて自分にとって特別な作品となったのです。
素晴らしき日々もけっこう好きだったのですが、終ノ空の方がプレイした年齢やタイミングを加味して強く胸に刺さって残っていました。
なので待望にして恐々としたリメイクでした。
作者がどう新しくされて――自分がどう反応するのか、と。
今回発売されてしばらく経ってようようプレイしたのですが、うん、素直に楽しめました。
エンターテイメント性がうまーく高められていましたね。
起きるイベントはおそらく変わっていない気がするのですが、語り方と解釈がスマートになっていました。
特に横山やす子視点が補遺とテーマ性の深化として良い具合に働いていました。やす子視点では彼女の背景が語られ、琴美への想いが綴られ、限度の知らない武闘派として恐れられている暴力団という現実的な暴力が得体のしれない"世界の終わり"の爆発的に広がる発端となった墜落死と関係していたと明かされ、その上で接続されるのです――無貌の神へと。
ここで現実的な暴力が非現実的な暴力に侵されて対立さえ出来ないという絶望の描きようは、現代の・日本の・地方都市にクトゥルフが「いる」と呼び出す手続きとして最高だったかと。
また終末や死よりも、愛についてというテーマが前面に強く押し出された或いは元々内包していたのを分かりやすくしたのは、ポスト素晴らしき日々の作品としてきちんと成立していました。
これも、愛なんだと思った。
なるほど、愛を否定し続けた人生だったけど、案外、愛に満ちていたのかもしれないなって思った。
――Yasuko Yokoyama
卓司:「ボクはたぶん、そしてたしかに救世主となって、すべての真理を手にいれたのだと思う」
卓司:「それでもなお、分からない事もあるのだろう――」
卓司:「それが今分かった様な気がする」
――Takuji Mamiya
愛について理解しえる範囲、言語化出来うる範囲で語り終え。
そして、初めの視点は物語に永遠に囚われて物語が締められる――
正しく、綺麗な作品になったと思います。・・・少しだけ寂しいですが。
エロも満足でした。
レズレイプ、浴尿、裸土下座などなど今風の絵できちんと魅せてくれました。もうちょっと尺が欲しい気もしますが、贅沢の言い過ぎかなと。
浣腸はありませんがね・・・(なんか素晴らしき日々の感想でも残念がっていた覚えがw
以上。当然ですが、良きにしろ悪きにしろかつての原典とは違う作品でした。今プレイに足りうる作品にきちんとリメイクされた労力を褒め称えて、この文章を終わりとしたいです。
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