彼女が欲しい大学生がベーカリーレストランでのバイトを通して恋人を得ていく――というラブコメADV。
ヒロインは5名ですが、皆初期では脈がない状態になっています。
ベーカリーレストランの従業員達は初対面であり言う及ばず。気心が知れ過ぎている幼馴染、10年ぶりに会った従妹も物語の開始時点では恋愛感情はかけらもありません。
0のスタートラインから、バイトや日常生活、メールのやり取りを通して、恋愛関係を構築していく――という展開になっていきます。プレイヤと視点人物との恋愛感情の変遷がシンクロする仕組みになっているため、ヒロインとの関係の構築に強い共感を覚えるようになっていました。
そして恋人同士になってからは非常に甘ったるい日々を過ごすことになるのですが、初期から思いもしない所に立っている人生の機微のようなものの感じるぐらい嵌ってしまいました。
恋愛関係を構築する架空の経験として、かなり良く出来ているかと。
この恋愛関係の構築というコンセプトをよりよく昇華させるためのゲームのリソースの裂き方も見事でした。
まずヒロインの服装のバリエーションは豊富なことに感動しました。日常、デート時、ちょっと気合い入れたデート時、イベント時などなどと視覚にも楽しいですし、主人公/プレイヤのためにヒロインが用意してくれたという喜びににやにやしてしまう所でした。
次いでメールの文面。日中にヒロインに自由に送れるメールのはフレーバーで悪くはないレベルでしたが、夜に送るメールは何気ない文面ではあるものの分岐が4種に渡り力が入っていました。そしてヒロインを楽しませる選択が続けば好感度が上がるのですが、好感度が高じた場合にヒロインから訳もなく何気ない電話がかかってきます。このメールをぽちぽち打っていた直後にヒロインから電話がかかってくるという変遷は心にぐっとくるものでした。好感度が一定のラインを超えたのだと実感が湧きますし、――まああれです、ぶっちゃけ好かれ出しているって判るのってほんと嬉しいものです。
そうした細部に力が入っていることで、恋愛関係の楽しさが増していたと思います。
そして最も大事な、恋愛関係になっていくヒロインそのものなのですが、誰もかもが魅力十分でした。
ヒロインたちに恋し、ヒロインたちから恋されて、アプローチされる――相思相愛という快楽。
またヒロインたちみんな恋愛を通して恋する乙女としてその魅力がより一層開花していきます。
恋に至った日々と、恋そのもが楽しい時間はプレイしていて楽しいと断言して言いものでしょう。
なのでこの主人公の台詞に本当に頷いてしまいました。
【主人公】「お前が……」
【主人公】「他の男に取られなくて良かった」
【 空 】「え……?」
【主人公】「あっ! いや、な、なんでもない!」
思ったことがなぜか口から出てしまった。
俺のことをここまでわかってくれている女性と付き合えて本当に良かった。
そう思うと自然と独占欲が湧いてきたのだ。
まさにその通り。
一番好きなヒロインは幼馴染の空。
気心の知れ過ぎた遠慮のなさすぎる存在同士という出だしなのですが、付き合うようになってから、彼女が付き合う前に何を考えていたのか判明すると、その男女を枠を超えた人としての好意に震えました。上記の台詞を吐くに足る、付き合えるようになったとんでもない恩恵です。
またオナホを燃やして曰く、
という豪快さとか。
後は性行為が2回目ぐらいで、ぽろりとこぼれた男性器を前にした言葉。
【 空 】「あのね、これからこういうことするの、私たちの間で……当たり前になるのかなーって……」
この台詞で恋人同士の特別性が艶やかに彩られましたね。
欠点を上げるならエロシーンにおける性行為の導入でしょうか。付き合いだしていきなりセックスしない慎みは好みなのですが、全体的にエロシーンの入り方はかなり雑でした。
特に家族を大事にするという設定のヒロインルートで寝ている妹の隣で性交というはどん引き。今までの家族を大事にするという流れとヒロインの性格で、それはないだろうと。
これはこれ、エロはエロと気にしなければ良いかもしれませんが、なんか厭でした。
以上。傷がない訳ではありませんが、丁寧に作られた秀作でした。
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