贖罪の教室 BAD END 感想

  • 前置き

 本作は元々2001年5月18日に発売されたもので、前年に発表された『贖罪の教室』のifストーリーとなっています。2003年4月25日発売の『生贄の教室』に教室シリーズとして『傀儡の教室』『贖罪の教室』『傀儡の教室HAPPYEND』とまとめられてディレクターズカット版で収録されました。
 今回の感想は『生贄の教室』に収録されたバージョンによります。
 なお『贖罪の教室』の感想は→贖罪の教室 感想 - ここにいないのは

  • 全体像

 本作は2000年、1999年、1998年の3章構造になっていて、プレイすることで過去へと遡っていきます。それぞれの章では『贖罪の教室』と異なる視点からの新たなる情報が得られたり、全く別の展開を見せます。


 2000年の章では前作において平松七瀬に始めて声をかけ贖罪を迫った男子高校生がメインの視点人物です。前作では名無しの男子高校生でしたが、美樹本俊貴と名前が明かされていますし、前作のキーパーソンであったジャーナリストの結城禎史を尊敬して彼のようになりたいと思っているという情報が加わります。真実を追うジャーナリストを尊敬する姿勢は美樹本を2方向へと動かします。
 ひとつは贖罪新聞の執筆。自分の書いた文章で人が動くのを快感に思うことによります。美樹本がどのように贖罪=凌辱を見聞して体験したのか、首謀者の大張によって書く内容をどのように命令にされたのか、そして彼自身の目的に基づいてどのように贖罪を誘導するために書いたのか――という贖罪新聞の執筆描写が書かれます。このことで前作で贖罪新聞編集部によって書かれた贖罪新聞がどのような意図に基づいて書かれたかが判明します。
 もうひとつは彼が書いたのではない、つまり凌辱を行っている側が書いたのではない贖罪新聞の出所と目的の追求です。前作で一応明らかになっているのですが、より細かい部分と目的に着目して推理していくため、改めて理解しやすくなっています。
 このふたつの行動によって思わぬ結末=BAD ENDを迎えるのですが、前作のアップデート的なエロを含めてなかなか考えられたものが多かったです。
 選択によって“執筆による支配”がウェートを占めた場合は贖罪という凌辱が崩壊へ向かわず、支配されたまま学園内で終始し、卒業することで解消されます。それは誰もが学園生活中ずっと凌辱されて終わらないために明確にBAD ENDでありながら、ヒロインたちは誰も死なないままに贖罪の成就してしまうという意味であくまで前作のアンチの正しいENDとなっています。それに前作の正史をほとんどなぞりながら、後藤有香の没落によって危うくなる可能性を垣間見せたりと、違いの見せ方が巧みでした。
 また贖罪新聞の書き手が“凌辱”に傾いた場合は贖罪が崩壊しますし、書くのに嫌気がさした場合や誤った場合は手遅れに――ジャーナリストの傍観者としてあろうとし介入できなかった悲哀を感じさせます。
 これらのifルート分岐のさじ加減は絶妙でした。


 あと1999年と1998年についてですがまとめて語ってしまいましょう。
 これら2つの章は前作で語りきれなかった過去です。それは現在の学生世代の過去であり、七瀬の贖罪のまた違う引き金となっていました。具体的には首謀者であった大張の過去と、相澤成美/新キャラの葵つかさの過去となっています。七瀬の贖罪と密接に関わっていたり、迂遠に関係しているのですが、人物関係が整理される内容でした。特に相澤成美の思考が判り、彼女の行動に納得行くようになりました。


 上記の3章を通じて前作『贖罪の教室』のありえたかもしれない/あるいはそうなったBAD ENDを見ることで、より前作の理解が深まりました。選択枝分岐を全て辿ることでただ一つの全体像を理解する――という過程は刺激的だったと言ってもいいかも知れません。良質のifでした。

  • エロ

 基本路線には前作と変わりません。弱みを握られて/或いは自ら望んで美少女たちが凌辱を受け、マッハで快楽に落ちていきます。精神が凌辱されていく興奮のウェートが大きいのも、シチュは輪姦がほとんどなのも同様です。そして導入も前回と同じ流れであり、それだけでは飽きたかもしれません。


 しかし本作において追加されたエロシーンは嬉しいものばかりでしたね。
 特に女性同士の性的な苛めが追加されたのは大きかったです。女性による呵責のない責め、男性に汚された女性に容赦なく罵声を浴びせる様――そういうものが見たかったので大満足。
 後は下着をはかせないでテニスさせたり、SMぽい攻めなどなど。矢張りそんなことされても感じてしまう女性の心理描写メインです。けれども学園内での行為っぽいものが増えていて、他の生徒にばれるかばれないかの怯えと、実は知り合いの誰もが知っていたという絶望といった閉鎖空間での秘め事という雰囲気がより出ていました。
 

 CG差分はないのですが、全体的に構図が良かったため前作より汚れている感じが出ていました。

  • 諸々

 全BAD ENDの回収は前作ほどではないですが面倒です。つまったらあっさり攻略を見るのがいいと思います。


 システムは特に問題ありません。

  • まとめ

 以上。ぶっちゃけると流れとエロシーンは大筋で似ているために『贖罪の教室』から続けてやると飽きます。ただ、そう間を空けて前作の熱が冷めたからやるべきではない性質の内容でもありますので、プレイの仕方は難しいかもしれません。それでも間違いなく本作によって『贖罪の教室』という作品は完結するので、前作をやられたのならプレイするべきです。


 ――留保すれば『生贄の教室』のメタ視点で『贖罪の教室』はガッタガッタにされそうなのですが、それもメタ物の楽しみであるので良しとしましょう。

  • Link

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