暁の護衛 感想

 フルスロットルでネタバレしているのでご注意してください。


  • 感想

 お嬢様育成とボディーガード育成を兼ねる学園を成り立たせるための社会背景は何かとシミュレーションしすぎた――のかどうか知りませんが、設定に中途半端に引きずられていました。
 貧富の差が極端になり、富める者は貧しい者を迫害するようになり、スラムのような限定された地域に隔離されているというのがその設定。そしてこの作品内ではそのスラムさえも潰そうと画策されている極端な社会の到来の過渡期にあります。
 こうなるとどういう展開となるかお解りでしょうが、二重の身分の差をどう乗り越えるかが焦点となります。問題となるのは乗り越えてからの話で、主人公とヒロインが差を越えて手を握ったモデルとなりえるはずもなく、反動→沈静化→社会の衰退が起こることは必然であり、過渡期以降彼らに苦難が訪れるのは想像に難くありません。といっても当然の事ながら大河ドラマにする訳にもいかず、伏線を張りつつ、彼らが作る歴史はここから始まる、となるか、スルーされて終わり。
 確かcircusだったと思うのですが、英国に占領されたためメイドを育成する学園が日本に創られたという作品があった筈で、そのエロゲライクな豪放さを見習えとまでは言いませんが、もう少し洒落の利く設定で良かったんじゃないかと思います。
 
 
 個別シナリオについてですが、短くて薄いにも関わらず無駄が多いため、結果として冗長と感じました。シーンとシーンの間がぶつ切りで時間経過が掴みにくかったのは兎も角、放りっぱなしの謎・人物関係は勘弁して欲しかったですね。
 またクライマックス直前でAパートとBパートというあからさまな選択枝による分岐を設け、違うのはエロシーンでエンディングは同じというのはゲームの在り方として美しくないと感じました。普通におまけとして別にすれば良かったんじゃないでしょうか。
 

 文章はそこそこ。笑いに関しては気に入りました。ノリ、無茶振り、メタ的とどれもそれなりのレベルで揃っていました。ただ人をいじる系統の笑いではやり過ぎで寒々しくなることも多かったが残念です。


 絵はめりはりのある良質の萌絵で、手放しで褒められます。音楽、シナリオは特筆事項なし。


 以上。続編が出ないとおかしいゲームでした。現状でも目の保養を心がければ楽しめると思います。

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 しゃんぐりら