EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 雑感

 ハイエボリューションシリーズの完結編。
 前作のANEMONEで惚れ直したので公開2日目に観てきました。
 
 うん。
 私は大好きですよ、という作品でした。

 少年を追い続けるループからアネモネによって脱却し、神秘的な少女の役割は終わったエウレカ
 24歳の兵士となり鋼鉄の魔女と評される彼女は、スカブコーラルを生み出す能力を持つ新たな少女アイリスの護衛任務に就くことになる――
 
 という出だしなのですが、この“エージェント“エウレカと”これからエウレカになる“少女との逃避行が最高に好き。
 貸し金庫に預けた資金と銃を持ち、シェアカーやバス・列車を乗り継ぎ、足跡を辿られように辿られても目的地を悟られないように道行を決める緊迫さ。
 しょうがないですがわがままを言うアイリスに時には叱り時には宥め、困難を乗り越えて徐々に打ち解けて仲良くなっている2人。
 それは料理が苦手なエウレカや、どなりつけるエウレカなど、ところどころあるコメディ調含め、エウレカセブンに求める面白さでは決してないのかもしれません。凄腕の兵士が一般人の未成年と逃げながら仲良くなっていくという先行作も多数あって、目新しいわけではありません。
 しかしエウレカだった少女の果てが今なお戦っている在り方の魅せ方の一つとして決して間違っていませんでした。
 あの特異な少女が現在の社会に適合し、大量生産の銃と標準機体を持って戦う姿は、苦いものが混じるとは言え、かつて大罪を犯した上で抗い続ける確かな証でした。
 
 だから、あの入浴シーンはまごうことなき名シーンだったかと。
 花の入浴剤を散りばめられた風呂窯に、傷だらけの兵士と傷のない少女が向かい合って、静かに語り合うあの時間。
 あからさまに描かれた年齢と体の対比は、少女がエウレカみたいに強くなりたいと告げたあの夕暮れ時に、そうならなくていい/そうならないように周りが頑張っていると応えに繋がっていました。傷だらけになるのは、引き継がない、と。

 そしてエウレカへの暴力――脱却したループで取り残した人々が襲ってくる在り方は奇妙で屈折していました。
 敵対行動を取りながら"あの方"と称し、ぼこぼこに殴り蹴りながら敬意を忘れず、どうしようもない"神殺し”の描写として見事だったと思います。
 あのエウレカの慟哭を引きずりだしたのはGJでしたね。

 その他シリーズ全体を通した情報の整理は自分ではさっぱり出来ないのでうっちゃって、最後にアネモネについて。
 アネモネは少女時代を共に過ごして共に大人になって、戦い続けるエウレカを見続けてきました。
 恨み骨髄になるのを乗り越え、人生に深く結びついたエウレカを肯定するアネモネに心が熱くなりました。
 地球が救われたことに湧くアネモネを除く全人類と、エウレカに救いが訪れたことを悟って喜ぶアイリスと、エウレカに会えないことを泣くアネモネ。その対比もまた綺麗で、アネモネエウレカとの関係の尊さに惹かれた者としてぐっときました。


 まとめきれなかったので、落穂ひろい。
・酒飲むか筋トレだけするエウレカの概念に爆笑。
・戦闘時の融通無碍のドローンの使い方は好みでした。なので最初の突入シーンは時めきましたね。劇場版エヴァ、劇場版閃光のハサウェイと言い、ロボのある世界の軍事行動を短時間でスタイリッシュに描かれるのは嬉しくなりますね。
・サブキャラクタの処理はちょっと性急だったり言葉足らずですが、尺の問題からしょうがないですかね。
・ANEMONEからシリーズを良く立て直したなという印象なのですが、このEUREKAを観てからハイエボリューション1を観直すと、あれはあれで情報として必要で悪くはないとなりいました。ハイエボ1単体の作りとしてはもう少しどうにかならなかったのかなあと残念な気分になります。なんだかんだANEMONE・EUREKAと単体で見れなくもないので、RENTONとして独立して面白ければハイエボシリーズとしての評価がもっと上げられたんじゃないでしょうかね。
・あとお約束ですが、逃避行中のデューイとの戦闘でデューイが溶鉱炉に沈むシーンは涙なしには見られませんでした(笑)。いやあれはやりすぎやろと思いましたが、笑ってスルーするのがよいかと。


 以上。ANEMONEほどエモーショナルに刺さりませんでしたが、好きですよ、ほんと。

  • Link

 OHP-映画『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』
 


 <前作感想>
  ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 雑感