SHIROBAKO 雑感

 評判高く気にはなっていたのですが、なかなか手つかずでした。最近まとまった時間が取れたので一気に視聴。
 大勢の人間による多数の工程を経て出来上がるアニメの制作のクリエイティブな面と作業的な面の両方を取り上げ、締め切りとかプライドの衝突とか力量の問題とか色々とトラブルがありながらもアニメの完成を目指す――という内容でした。
 2クール全体を通してテーマからぶれることは全くありません。
 アニメ制作現場で一生懸命働く人たちの個々の人生設計の目標は異なるにしても、いまそこで働く第一の目的は一致しています。
 ――より良いアニメを作る、と。
 そのアニメ作成への四苦八苦と、また長い目で見た人生設計をどうしていくかという苦難に温かい目が向けられます。
 色々と大変だけど、好きなことで生きていくのは何物にも変えられない、筆舌に尽くしがたい歓びが待っているよ、と。
 当然負の面も描いていて、美化され過ぎているけらいもあるでしょうが、勤め励むのを陽性に描いている本作は、一生懸命働く者たちへの優しい応援歌という感じでした。
 なるほどこれは評価されるはずだという出来栄えかと。


 あと少しだけ内容の詳細に踏み込んでおきます。
 主人公格は5人いて、宮森あおい――かけだしのアニメ制作進行、安原絵麻――かけだしのアニメーター、坂木しずか――かけだしの声優、藤堂美沙――かけだしの3Dクリエイタ―、今井みどり――脚本家希望で勉強中。
 彼女たちは高校時代に同じアニメーション同好会に所属しており、将来一緒に商業アニメを作ろうと誓いを立て、それぞれの分野に飛び込んでいっています。
 1期でそれぞれのかけだしにおける苦悩を示し、2期において各々なりのきっかけであおいが制作デスクを務めるアニメに関わっていくようになる――というのが大まかな物語の展開です。
 この、一度ちりぢりになった面々が偶然も合わせて再度結集するという流れは非常に心を打つものがありました。
 加えてその偶然を引き起こしたのは彼女たちの挫折をしながら膝を折ったままでいない不断の努力であるから、なおさらです。


 特に心を打たれたのは声優・しずかに関して。
 彼女は2期のメインとなるアニメの声優オーディションに参加し、良い感触を得るものの落選します。
 なのでしばらくは彼女だけが取り残された形となります。そのままで結構進むので、え、このまま終わっちゃうの??と心配になるくらいでした。
 ――まあ、そんなはずはなく。
 満を持して訪れた第23話。
 それは偶々出現したアニメ監督と原作者とのブリーフィング。仲間を失い、空を飛べなくなったキャラ・アリアをどのように再度空を飛ばすか、という話し合いで、こう言葉が連なります。

【木下】「アリアがキャラリンとの約束を果たすというのは。生まれたての子牛を見ようという」
【野亀】「いやあ子牛だけでは弱いです、木下監督。もっと何か、誰か」
【木下】「キャサリンの両親」
【野亀】「いや、もっと希望の光になるような」
【野亀】「……妹とか」
【木下】「キャサリンの妹、いいですね!」
【野亀】「うん、仲間の死を経て出会った新しい命。少女が住む美しい故郷」
【木下】「そのすべてがアリアにとって守りたい存在となる!」
      (SHIROBAKO、第23話)

 おお、おお!  ここで、事ここに至って、ようやく彼女たちが揃うのか! そう、興奮せずにいられませんでした。
 それから。
 あおいは下っ端ではあり、収録現場で初めて友人に舞い降りたチャンスを知ります。その反応と言ったら……。
 本当、こみあげてくるものがあります。いやあ、たとえフィクションでも、頑張ってきた人が報われるのは嬉しいものです。
 

 ……実のところ、2期になってからパワーダウンしたなあと思っていたのですが、この最後の一撃をくらっちゃあ参りましたと頭を下げるしかありません。

 
 あと最後に。女性陣のビジュアルが非常に良かったのもポイント高いです。デザインも良いですし、動画でもかなり魅力を出していました。彼女妄想が捗る捗る。


 以上。傑作でした。お薦めです。

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 OHP-TVアニメ「SHIROBAKO」公式サイト