幕末を描く依頼を受け、関ヶ原の戦いから始まり徳川幕府の治世を語り出した歴史大河漫画。
徳川幕府の統治システムと、今に不満を抱く風雲児たちの生き様との対立・衝突を軸として描いています。
怨み――長州、薩摩、土佐の関ヶ原の戦いの後始末および苛烈な押さえつけへの反発。
恨み――蘭学に臨み蘭学を通して世界を望んだ者への新しいもの・外のものを許さない弾圧への抵抗。
長い時間と人の犠牲を積み重ねられていくことで、嘆きが深くなっていきます。
前野良沢が閉鎖的な社会で未熟なままに外国語の第一人者となってしまった嘆き、平賀源内の狂乱への嘆き、神昌丸の乗組員がロシアで日本を希求した顛末への嘆き、高野長英はああも撲殺される最期を迎えるべき人ではなかったという嘆き。
哀しい愚かな話が多いのですが、全く暗く落ち込むだけではありません。
それは随所で取り入れられたギャグ調のおかげも当然あります。ただ風雲児たちとあるいは徳川幕府の中の人間もそうですが、生きた人間が残していく継がれていくものを今生み出しつつあるという生命力に満ちた鮮烈な描写を目の当たりにすることが大いに威力を発揮していました。
あらゆる人物と時のうねりがふとした時に予想外の繋がりを顔を出しながら、幕末の時代を彩る要素へと収束していく手付きは見事であり、先をどんどんと読みこませつつ、前を読み返させる力を有していました。
個人的に嵌り出したのは2巻において土佐の仕置きの果ての
(2巻 No69)
から続く、突然挟まれるぞくっとくるコマ。
そこでこの漫画が端倪せざるものだと遅いながら漸く気づきました。
wikipediaを見ると出版社と色々とあったようで、本作は竜馬が土佐から江戸に旅立つ所で終わります。幸いなことに幕末編へとバトンは繋がれているようであり、まだまだこの史観で読み続けられることに感謝をしたいです。
以上。大河物の傑作でした。
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