アクタージュ 10 雑感

 かくして舞台『羅刹女』、サイド「甲」/主演「夜凪景」の舞台の幕が開ける――

 これまで、それぞれが「怒れる」羅刹女に至るために、夜凪は自らの底に眠っていた怒りの源を掘り起こそうとし、百城はそれまでの自分を打破しようとします。
 その上で演出家は悪魔のように、自身が描く「怒り」へと彼女たちが歩く道を誘導していきました。

 そして準備は終わり、まず本番を披露するのは夜凪のターン。追いかけていくうちに、追いかけられることになった彼女に相応しい順番です。
 彼女の日常にはしばらく形がなかったマイナス感情を自覚して「怒り」、その「怒り」を本番の直前も直前にとんでもないレベルまで焚き付けられた夜凪は――激怒します。
 誰もが人としてどうかと思う手続きを経たのですが、そもそもの夜凪本人が芝居が壊れるのを良しとする人種ではありませんでした。

 飲まれるな
 利用しろ
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 ここで顕れたのは、そう、俗に言う『主人公がラスボス』という概念。
 ある種の人々にとって美酒極まりない劇薬でした。
 この緊迫、この緊張――感情が操作されるのが快楽なのはこういったことを言うのかと納得した次第です。

 これから更にどういう芝居が見られるのか、そしてなおその上で百城はどう超えてくるのか、本当に楽しみで楽しみで。続巻を再度心待ちにしようと思います。

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