装甲悪鬼村正 感想

 意思を持つ甲冑を身にまとった武者が支配する世界。陰鬱な青年・湊斗景明が『善悪相殺』の妖甲村正を身にまとい、各地で大量虐殺を重ねる銀星号を追う。


 という内容。
 スラッシュダーク・アドベンチャーと銘打ち、善悪相殺な主人公であることからかなりダークな展開をします。そこらへんは体験版第1章を最後までプレイすれば判るでしょう。
 それで善と悪こそがこの作品の大きなテーマとなっています。登場人物の誰もが大なり小なり己の生き方を示しながら善と悪に関わっていきます。それが世界に生きるということだから。最も象徴的な台詞としてお約束のように甲冑を身にまとう時に叫ばなくてはならない銘があるのですが、村正はこうです。

 鬼に逢うては鬼を斬る。
 仏に逢うては仏を斬る。
 ツルギの理ここに在り!

 その意味/その発露は見て知っていただくしかありません。言えることは徹頭徹尾凡人である湊斗景明には極めて重い。しかし重く感じるからこそ意義がある――となっています。最初から最後まで茨しかない道のりではあるけれども、だからこそ――

 これは英雄の物語ではない

 軌跡の屈託に心が動かされました。 

 
 戦闘は流石刃鳴散らすのシナリオライタと言うしかありません。赤と青の模型人形を用いて剣術を判りやすく、心底懇切丁寧に述べます。もう最初に模式図を見たときにはキターと興奮してしまったぐらいです。
 流儀による剣の違い、甲冑を着た人と着ていない人との絶対の武力の差、物理的な優位の存在、地の利、テクノロジーによる甲冑の発展、陰義という戦況を繰り返しうる特殊な技などなどを用いて多様・絢爛な戦闘が繰り広げられます。興奮しない訳がありません。
 ただ物語の性格上もあるのでしょうが、主要な登場人物同士の戦闘で完全に決着が付くまで書ききったものは意外と少ないです。余韻が残った終わりの風景は描かれるのですが、美味しい所を食べられないお預けを何度も喰ったのはやや不満でした。特に茶々丸ルートでの最後の戦闘はそりゃねーよと絶叫しました。


 逆に恋愛に関してはそれほど深く突っ込まず、テーマに沿ってヒロインと寄り添い、別れることになります。
 それではヒロインごとに関して少々。
 綾弥一条。正義です。かなり厄介な人に成長するのですが、クライマックスで泥を啜っても遣り遂げるとついに決意したあたりで好感度が逆転して好きになりました。しかし体の中はどうなっていたんでしょうかね……
 大島香奈枝。正常に育てられた快楽殺人嗜好を持つお嬢様というあたりで、既に勝利しているかと。ラストのあっさり具合はこんな戦闘で……と感じさせられたので擁護します。
 足利茶々丸。不遇な小悪魔キャラで、魔王編以降のキャラ立ちは留まる所を知りませんでした。虐げられたり、寝床に忍び込んできたり、洗脳したり、何処の萌えキャラなんでしょうか。ルートはあっさり気味で、最後の戦闘は入るまでが格好良過ぎるため逆に納得行かないのですが、キャラだけは良かったです。
 村正。Nitroなのに、人外なのに、ロリではありませんでした。えらいことです。が、かなり可愛いキャラでした。ラストのエロシーンはどきゅんときましたので何もかもが問題ありません。


 シリアスに挟まれる或いは同等の笑いは合いました。唐突に薀蓄を語りだす湊斗さん、学生時代に部活頑張りすぎな湊斗さん、妙に器用な湊斗さん、けだものな湊斗さんetc、繰り返しギャグなのですが、ツボにきました。


 最後に文章に関して。文体に癖はないのですが、一文一文の密度が高く、味がありました。
 

 絵は非常にレベルが高かったです。老若男女皆格好よく・きもく・美しかったです。エロい絵は極めてエロかったです。
 エロは陵辱ありありで湊斗さんがけだものでエロかったです。ですが、何故か戦闘と同じようにつまみ食いしただけで全て書きません。何故、全てをみせてくれないでしょうかねー。強い女性を落とす感じで大変好みだったので残念です。
 3DCGはいつもの如く。ただムービー・エフェクトが今ひとつ効果的ではないように感じました。抜刀や着甲アニメなどは荒いもののそれなりなのですが、入れ方がその戦闘ごとにあっていませんでした。
 音楽は何時ものごとく良かったです。声も合っていました。
 システムはバックログから容易にゲーム画面に帰れるようになっただけで満足です。

 
 なお限定生産版を購入したのですが、初めてパッケージを空けた時の木の匂いは忘れられない印象を残しました。木の箱というのも乙なものでした。


 以上。ボリューム満点で滅法面白く引き込まれるのでお薦めです。が、爽快感はありませんのでご注意を。

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