ほうかごがかり2 雑感

  『ほうかごがかり』に指名された小学生は毎週金曜日の夜、闇に包まれた小学校で「無名不思議」の世話をしなければならない。お世話に失敗すれば――

 メルヘン作家を自称する甲田学人氏によるホラー小説の新シリーズ2作目。
 「無名不思議」を名付け、怪異として適切に記録出来れば、危険なものを鎮めることが出来て生き延びられます。ただし、成功したものはほぼおらず、おおよそが失敗して死んでいる――というおぞましいお仕事でした。
 それでも前作では主人公・二森啓が絵描きとして観察して、理解して、絵にすることで、命からがらではあるけれども成し遂げたのです。
 その次作にあたる本作でも上手くいくなんてそんなこと――このメルヘン作家が赦すはずもなく。
 未だ小学生の未熟な絵描きが自分の恐怖を時間をかけて形にしていってようやく成し遂げただけであって、ほかのひとのこわいものを形にするのは簡単なものではありませんでした。
 曰く、『ムラサキカガミ』。
 曰く、『テケテケサン』。
 どう絵にするのが困難なのかは読んでもらうしかありませんが、なるほどこれは厄介だという怪異が繰り出されます。とりわけ『テケテケサン』はどうしようもない感じで、よくもまあというこじれ方をして逆にわくわくするぐらいでした。
 そして残念で残酷なことに、『ほうかごがかり』にとって時間は味方しません。彼らは小学生で時間が経てば成長していく者たちなのですが、わからないまま/記録がうまくいかないまま時が経つと相対している「無名不思議」の怪異こそが成長して管理が出来なくなり――小学生の未来が閉ざされるのです。
 なので小説を読み進めて時を進めていくたびに、作者よどうしてそんなことするの――という破局が訪れ続けるのでした。
 それが面白いのだからホラーというのは困ったジャンルですよ。


 以上。これからもきっとおそろしくておぞましいことが起きていくのでしょう――それが楽しみです。

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 <既刊感想>
  ほうかごがかり 雑感