本編の記憶はあやふやで、AO見ずも見ずに、突っ込みました。
というのも本編のアネモネとドミニクの関係性が非常に好きだったので、彼女に関する映画ということで興味を引かれたためです。
ただ時間をおいて思い出しても、あれはなんだったんだろう――とふわふわと足がつきません。
自分は何を観たのかと戸惑っています。
セカイ系で、百合。
真顔でそんなことを言いたくなるし、まあ大きく外れてはいません。
世界の描き方とか、戦闘美少女の世界との接続の仕方とか、そういう空気とか雰囲気とか。
ただこう、これはそう、届かせようとした対象に深く突き刺さるヤツなのだけは間違いなく。
エヴァとか新劇ヱヴァとか、イリヤとか最終兵器彼女とか、それこそエウレカセブン本編とか、そういうのを経てきて、ちょっと落ち着いたあたりで、過去のリメイクでああいうのを語られたらそりゃ負けます。
・・・・・・印象論を連ねてもしょうがないので内容について少しだけ。
最初の数秒でこれはやばいと思いました。
幼いアネモネが走りながら道順を語る冒頭。未来で別世界で、でも走るのは古めかしい団地をスタートに、コンクリートの坂を、地下水道を超えて、ゴールは空港の原っぱ。そういう旧い地方都市のノスタルジア。
絶対こいつは後で活きる前振りだと確信しました。
――観た人は判りますが、その確信が裏切られることは嬉しいことに全くありませんでした。
アネモネ。
真っ当な父親に真っ当に育てられ、真っ直ぐ育った彼女。AIのドミニクに若干依存気味だけどそれも玉に些細な瑕で、結果として明朗でこれと決めたらつき進む美少女に成り果てていました。
本編のアネモネとは名前と皮だけが同じなだけです。
彼女を本編は本編でこれはこれと受け入れられるかどうかで、色々と違って気はするんじゃないでしょうかね。
それにしても、最初から最後までドミニクを含めて戦闘美少女が家族の絆を再確認するムーブである種貫くとは思いもしませんでした。
戦闘する敵は、相対するのは――魔女、エウレカ。
アネモネが正しい家族に恵まれたifであるのであれば、エウレカはレントンを失ったifです。
アネモネは世界を救おうとただ一人、AIを共に最前線に立っていた。
エウレカは失ったものを取り戻すために、何度も何度も世界に反抗してきた。
そんな孤独に戦っていた彼女たちがようようにして遭遇し、まぼろしのぼろい公園で向かい合い、お互いの拙い想いを交わし合う。
言葉の響きだけを取るのであれば軽々しいものがありました。
幸せな夢に沈みたい――という諦観。
傷ついても何かを得てきた現実を信じる――という強度。
ぼろぼろになって、もう死にたい――という弱音。
膝を屈せず立て、そんな君の隣にいよう――という宣言。
しかし、それらの言葉の交錯を見て、本当に、ほんとうに心を打たれたのです。
何が琴線に触れたのか、自分では明確に言語化できません。
何度も何度も繰り返せばひょっとして、理解出来るステージに立てるかもしれませんが、ただ一度の経験――初見の想いとしてはただひたすらに心を深く震わせていただけでした。
それから?
それから彼女たちは手を取り、走りだしました。互いにまだ見ぬ、未知に向けて。
全体像から見ての丸っきり異なるリメイクにおいて、この作品の中でリフレインとなった、その2人の走りに快笑しない筈ないじゃないですか、ええ。
それにしても最後で、こうなってレントン要る?と疑問に思ったのは愛嬌ということにしておきましょう。
以上。人にお薦めするものではありませんが、個人的には世代ノリの極地と取りました。劇場でやっている内に何度か見返したいところ。
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OHP-映画『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』