児玉まりあ文学集成 1-3 雑感

 児玉さんと笛田君が延々と言葉を連ねていくおはなし。きっと、ラブコメ

 不勉強で今まで本作を知らなかったのですが、ふとしたことで出会い、ぞっこんに嵌ってしまったのでした。

 最初は児玉さんという髪の長い不思議な美少女が衒学的な会話を仕掛けてきて、笛田君が翻弄されながら直接的なことばで児玉さんを動揺させる型式なのだと勘違いしました。
 いやほら、2話『しりとりのきずな』でくじらを継いでラフリン波動関数と言い、はしもと製菓に対してカイパー空中天文台と言ってのける児玉さんなのです。
 それに、1話『比喩の練習』で「猫はカレーライスのように冷たい」と比喩をつくってから、笛田君にバトンを渡す児玉さんなのです。

 (1巻、kindle No.21)

 笛田君は少女の神秘性についていくのがやっとで、それでも外してはならないところは言葉の出し方を外さない、と。

 しかし、胡乱な言葉のやりとりの繰り返しをにやにやしながら見ていくうち、次第におやおやおやー?と首をひねることになりました。
 その気分は形容するなら啓蒙で、描かれているもの、観ているもの、語られているものが『そう』とは限らないのだと察しの悪い読者である私でもようやく気付いていったのです。
 日常を神話として読み解く方法や1話と対になる"比喩のない"文学や"小説の断片化"や"言葉はレゴ"だとか、言葉と物語とそれを通した世界の見方とを楽しそうに語ってきた児玉さんもまた語られていて、観られていた、と。
 笛田君の反応を、答えを、その言葉を些細なものでも知りたくて嬉しいので引き出そうとしていたし、その少年の言葉によって児玉さんはある意味再度形作られてこの世界にあるようになっていきます。
 少女と少年の相互を規定するやり取りは、文学の終わりとお話のジャンルというこのお話の限界へと言及していき、

 (2巻、kindle No.68)

 やがては少年と少女の定義へとようやくたどり着くのです。
 このシリーズは少年と少女のダイアローグがメインで、愛のお話で、壮大な宇宙喜劇だと読み終えて――叫ばしてください。


 なんなのこれ!!
 こんな純度100%のボーイミーツガール、純度1000%のラブコメ読んだことないし!!!!!!


 以上。傑作、オールタイムベスト級のラブコメでした。大好き。座右の書にします。

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