日本SF短篇50 III 感想まとめ

日本SF短編50 3購入link
日本SF短編50 3所収「交差点の恋人」読了。+2。山田正紀作、再読。パルスとなった美少女が狂った脳の大脳髄質の荒野を超え、無髄神経系を奔り、辺縁系を踏破するーー。唯一にして無二の読感。どうしようもないほどの傑作link
そして猫印のキャットフードに誓って!というネコSFでもある。ブサイク萌えとして最高。link
これをアップデートしたのがNOVA8の雲の中の悪魔になるのかなlink
日本SF短編50 3所収「戦場の夜想曲」読了。-1。田中芳樹作。地球VSシリウスの恒星間戦争の戦場で、少佐は謎めいた力を持った少女に出会ったーー。いつもの田中芳樹は既に完成していたんだなあという、政治劇と会話劇っぷりだった。面白くはないけど、微笑ましいlink
日本SF短編50 3所収「滅びの風」読了。+1。理想的な生活を送る家族の日常の一幕ーー? これは終末というありきたりな内容を魅せる切り口が良かった。それに予感だけが先行し、事実が追いつく怖気は素晴らしいlink
日本SF短編50 3所収「火星甲殻団」読了。+1。火星では人と機械知性の搭載された<ヴィートル>とが共存していたーー。人と機械の共依存が素晴らしく格好良い。ヴィートルは人がいないと動かず、人はヴィートルがいないと火星で生きていけない。link
またオーバーテクノロジーでカスタマイズされた乗り物フェチには感涙かもしれない。車輪はボーラーという球体に置き換えられ走行は跳躍を含め自由が利き、互いの目的に沿い幾らでもオプションがある。そして何よりAIにより自発的に進化して行く。いやあ、ぞくぞくぐらいガジェット心をくすぐられたlink
ストーリー自体はよくある火星西部劇なのだけど、この設定だけでご飯三杯はいける。長編使用を何とか手に入れたいlink
日本SF短編50 3所収「見果てぬ風」読了。+1。二つの壁に挟まれた世界でやむにやまれぬ感情に押され男は歩いて果てを目指す――。素晴らしかった。歩いて、歩いて、歩き続け、最後まで歩みを止めない生き方の不可解性に答えるような、世界の不可解性がある。何て言うか説明しにくいけど、大好きlink
それにしても僕はDOINGのSFが琴線に触れる。ティプトリーの絶品「歩いて帰った男」、小川一水の小品「漂った男」とか。link
日本SF短編50 3所収「黄昏郷」読了。+2。野阿梓作。所は虚数海の國、夢を犯す病が流行り、遂には王が倒れ、夢への反抗が始まる――。SFファンタジィの名作。華やかな文章、艶やかな描写、煌びやかな御噺――瑕疵は無く、言うこと無し。中二とか耽美とかビョーキが嵩じて極致に至っている。link
ちょっととんでもないものを読んで、心が持ってかれた。/"もはや形象はない。"/片身を亡くした竜は己の毒に苛まれながら消えない虹を作り、王は海の底で泣き、魔女は誘い、一心不乱の戦争が始まる。/ワンダフル!link
日本SF短編50 3所収「引綱軽便鉄道」読了。0。奇妙な生物の生態を擬音を用いて豊かに描いている。椎名誠っぽい良作link
日本SF短編50 3「ゆっくりと南へ」読了。+1。一月に1cm程度南へ這うスロウリィという生物と、寄り添って生きていく人間の物語。のんびりというにはあまりにも不動のスロウリィ。人が三代変わろうとも不変のスロウリィ。その時間のスパンの対比が恋の1点で交差するのが美事link
ハローサマー、グッドバイをわかりやすくハッピーにした感じでもある。あれの前半が好きならお勧めlink
所でハローサマー、グッドバイの後半が好きな人は何がお勧めなんだろう。スワンソングとか、瀬戸口and唐辺作品かなlink
日本SF短編50 3所収「星殺し」読了。0。とある銀河の最外縁で宇宙開発を観察する「私」は開発を促進させるよう命令を受け、何千年単位での星の進化を間接的に推進していくーー。シミュレーションSFの良作。シミュゲーの失敗プレイを見たりするのが好きなら興奮すること間違いなしlink
日本SF短編50 3所収「夢の樹が接げたなら」読了。+1。森岡浩之作、再読。人工言語が流行する社会で、言語デザイナーは移植された人間が社会生活に支障をきたす言語に迫るーー。ストーリーは追跡物でエンタメし、肝の言語関連はイマジネーション豊かと独特の作風。こういうのを突き詰めて欲しいlink
これで『日本SF短編50 3』読了。相変わらず素晴らしいアンソロジーで堪能した。どれも好みでどれが良かったとか挙げにくいけど、強いて3つ言うなら「黄昏郷」「交差点の恋人」「見果てぬ風」かなあlink