妖怪ハンター 1-3 雑感

 異端の考古学者・稗田礼二郎が研究のため訪れた場所で怪異と出会うのを描いたオカルト伝奇漫画。
 名作と名高いのは知っていましたが、これまで触れる機会がなく今回初めて読みました。

 や、噂に違わず非常に面白かったですね。
 文句なしにフィールドワーク系の伝奇の傑作。
 怪異にまつわると思われる異常な現象や事件を調査していくうちにその怪異がほんものであると判り、人にほど遠いそれらの道理や理屈を文献や実地調査で整理していきます。しかしその調査は知るだけであり、人知を超えたものによるってほどこされる破局はほぼ回避することが出来ません。ただただ生き延びえたことだけが儲けもののような終わりが訪れます。
 全然ハントしないじゃん、というのは兎も角。
 この展開と絵の迫力とで全編に「畏れ」が張り詰めており、頁を重ねて人外へと近づく「緊張」が嵩じていき、余人には真似できない高いレベルの作品へと昇華していました。

 ほぼ1話~3話で完結していてどの話も良いのですが中でも好きな話を3本上げれば、海に向けて平家物語がかき鳴らされる異様な祭りを巡る「海竜祭の夜」、100年近く前に途絶えた祭りを人を呼び込むためにあえて誤って復活させたことで恐ろしいものを呼び寄せた「闇の客人」、隠れキリシタンの昔話が伝わる村で起きた数十年ぶりの殺人事件を取り上げた「生命の木」となるでしょうか。
 とりわけ「生命の木」は最高。そこまで突飛な伝奇ではないのですが、田舎町の異様な殺人事件からクライマックスにかけてその描写は神がかっており、マイオールタイムベストクラスでした。

 
  (妖怪ハンター1 地の巻 kindle No.80)

 ここからああなるとは、そして神秘性をあのように描写するとは、お見事としか言いようがありません。


 以上。遅ればせながら読んでよかったです。今更自分が薦めるまでもないでしょうが、お薦めです。

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