2205年現在、12基のタイタンAIによって人類は仕事から解放されていた。しかし趣味で心理学を学んでいる内匠成果は政府よりカウンセリングを『仕事』して命じられることになる。そのカウンセリングの対象はタイタンAIだった――
というSF長編小説。
AIをカウンセリングすべし――と始まったこの小説はあまりにも神話的な、野﨑まどの小説としか言いようがない奇妙な展開をしていきます。
タイタンAIにどうやって人間とコミュニケート可能な自我を生み出すのか。
観察・試験・カウンセリングの結果、タイタンAIの病名は何か、そして病巣への処方は何か。
その結果として、どうしていつのまにやら世界を半周することになったのか。
世界半周の旅でAIとカウンセラーの人間が目にするものはいったい――
信じられないようなことでも信じていいのだと改めて思う。私達の常識で彼を測るべきではない。ありのままの彼と向き合うために私も常識は捨てよう。幸いコイオスの中には常識を要求する他人もいない。私と彼。二人だけだ。
こうして二二〇五年十二月十九日。
私達の旅は始まった。
(野﨑まど.タイタン(講談社タイガ)(pp.213-214).講談社)
AIと人間が肩を並べて旅立つSFならではのロードノベルへと突入する中盤以降、とてつもない大ぼらが吹かれ、ぬけぬけととんでもないことが目の前を通り過ぎていき、そしてあまりにも美しい絵が顕れ続けます。
読んでいてもうどうしようもなく興奮しっぱなしでした。
これが面白いということか――と。
完全なるディストピア/ユートピア/未来のない未来にたどり着く終わりまで、心底面白い小説を堪能いたしました。
読めて幸せのひとことです。
以上。最高に好き。出た当時に読んでいたら年間ベストにあげていたでしょう。
ところで、バビロンの続編はー?
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