『君と時計と』シリーズ 1-4 雑感

 小学生の時に同級生の少女を嘘で貶めたことを後悔し、鬱々と生きていた少年・杵城綜士。
 高校生2年の秋、綜士は親友が突如として世界から存在ごと消え去ったのに気づく。ただしそう認識したのは彼だけだった。
 親友を探す綜士に時計部所に属する天才・草薙千歳が協力し、失った友人を取り戻そうとするも、世界の謎に更に翻弄されていく――


 というタイムリープSF。
 全体的には時間跳躍・思春期・仲間たちの絆――という感じで、由緒正しくジュブナイルSFの流れを汲んでいるかと。
 ただ古めかしい訳ではなく、この作品の独自性は十分にありました。


 4巻とたっぷりとボリュームを使って、登場人物たちが推理を重ね、仮説に基づいて何度も失敗し、傷つき失いながらも、徐々に世界の謎を捉えていく――というルールを解き明かしていく流れは時間SFの醍醐味の一つであり、非常に読み応えがあり。
 そしてタイムリープの周回として失敗し、失われた筈で読者しか知らない情報を、次の周できちんと説得力を持って推理させて新たな思考錯誤をさせる構成は知的に外連味がありました。それに徐々に明らかにされる真実も衝撃が大きく、読んでいて周回に飽きることは全くありませんでした。
 最後のどんでん返しも爽快ですし、非常に優れた出来栄えと言ってよいかと。
 若干主人公の鬱屈した語りと自業自得さがネックとなって読み進めにくいかもしれませんが、そこを乗り越えれば間違いなく楽しめるでしょう。


 以上。読んで良かった秀作でした。この世界観で続きがあれば読みたいですね。

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