10年後の未来からザップの娘を名乗る少女・バレリーが訪れた。彼女が「スポイラータイム」と言葉にするとき、自動的に未来の出来事が語られる。バレリーの正体と目的をライブラの面々は探ろうとするが――
内藤泰弘の『血界戦線』を、『魔術士オーフェン』の秋田禎信がオリジナル・ノベライズするという悪魔的な発想の企画。
見事に噛み合い、騒々しい街での密かに世界を救う乱痴気騒ぎの多数の内の些細な一幕を綺麗に書き切っていました。
原作世界でそういうこともあるよね――と思うようなノリのエピソードであり、そしてどうしようもなく秋田禎信の小説でした。
まず掴みはばっちり。
ザップが取り出す武器は、掌に収まるほどの金属。
やや特殊に思える形状のライターだ。
彼はそれを手にして指に力を込める。
その特異なる得物の、鋭いエッジが皮膚を食い破る。
指の間から、拳の隙間から、血が滴り落ちる。
(血界戦線オンリー・ア・ペイパームーン(ジャンプジェイブックスDIGITAL)(Kindleの位置No.294-298))
ここから続く8行が本当に格好良い。
地の文で異能を魅せる力をフルスロットルで発揮してくれました。
以降、ザップのクズっぽいオフビートなギャグも、ザップが世界の守護者たる熱いところも、またライブラの面々が如何にして世界を護っているかも、解釈不一致をほぼ感じさせず、するすると読むことが出来ました。
滅茶苦茶傑作という訳ではないのですが、ノベライズではなかなか難しい、普通に面白いという絶妙な線をきちんとついてくれたことは嬉しいと言っていいのでは。
以上。快作でした。企画を成立させた方、GJ。2巻目も読んでいきます。
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