あえて無視するキミとの未来 雑感

 諸手を挙げて面白いとは言い切れませんが、見所があったので短く適当に書いてみました。


 内容は、未来視を持つ少年が放送部で学園祭に向けて美少女達と活動していく――という感じの青春部活物。
 主人公は未来視のせいで未来が確定していると思ったり、両親が亡くなった過去の事故に関してトラウマを持っていたりします。そして、転校してきた少女・爽花は同じように未来視を持ちながら未来を変えられるという信念を持っていて、その考え方の違いに惹かれていくとか、義妹の七凪が過去の事故に関係していて結ばれる障害になったりだとか、ごくごく一般的なストーリー展開がなされます。ヒロインは全部で4名で、残り2人もさして面白みの無いストーリーでした。親との葛藤とか、ヒロインとモブキャラが親友とか、そんな感じです。未来視がアクセントになりきれておらず、物語に今ひとつ馴染んでいないのもマイナスポイントでしょう。


 しかし、残念なストーリーライン・意味の無いガジェットの欠点を度外視すれば、結構魅力的にキャラゲーをしていました。
 ヒロイン達がみんな実に可愛い。
 例えば甘やかしの先輩キャラ・橘 南。ちょっと天然が入っているという設定です。主人公が心を掴まれたと騒げば、「わしわし」とちょっと嬉しそうな口調で発語し、手を握る動作を行います。あざといっ、あざといのですが、キャラの平常運行のシーンから浮いておらず、この性格が居るならばこうしてもおかしくは無いだろう――という陽性の評価になりうる範囲に収まっていました。
 他にもツーカーの仲の幼なじみ・真鍋 計。日頃は愛称で呼び合うのですが、時折、主人公を名字で呼び、主人公も「真鍋さん」と返し、訳のわからない小芝居へと所かまわず突入して行きます。その小芝居はドタバタとして不快ではなく、解りあっている同士のじゃれ合いの楽しさを感じることが出来ました。
 はたまたブラコン街道まっしぐらの義妹・沢渡 七凪。隙あらば義兄を性的に落とそうとし、他の女に振り向けば「この野郎」という決め台詞と良い笑顔と共に頭突きを食らわします。それはそれで微笑ましいのですが、ふとした時に、極めて素直で儚い貌を見せます。どちらが素顔かではなく、どちらも本性であり、その計算ではない、性格の振れ幅には、蕩けるような"妹"の女の魅力が在りました。こんな妹ならとめどなく落ちていっちゃいそうです。そして決定的だったのは呼び方。男女間の意の好意を持たれていると意識してから主人公の『兄』としての呼び方が一定しなくなります。"兄くん"とか"兄者"とか一人シスプリをやるのですが、その初々しすぎる動揺の仕方に乾杯/完敗です。久々の義妹のスマッシュヒットと言っても過言では無いかと。
 最後に転校生の三咲 爽花。これは赤面キャラとして最高でした。軽い下ネタに赤面し、重い下ネタに逆上し、恋愛に耳まで赤面します。内面の純朴さを表す身体表現として、表情がかなり有効なキャラでした。ああ、こういう表情をしてくれるのだ――と思うことにより、よりキャラクタへの愛着が増しました。


 そして、これらの魅力的なキャラの絡みもまた大変面白く仕上がっていました。どのルートでもほぼ全キャラが絡んで来て、アホな会話・馬鹿騒ぎを繰り広げます。エロゲの群像劇として、それなりに良好の部類に入ると思います。CGも風見春樹を筆頭にクオリティが高く、表情もチャキチャキと変わるため、会話の妙を高めていました。


 その他の要素としては、エロ関連でブルマへの拘りが面白かったですね。節度のあるブルマラーの鑑の姿には笑かしてもらいました。


 以上。繰り返しになりますが良いキャラゲーでした。キャラを楽しむ為に、シナリオに目を瞑る自信があるならプレイしても良いかもしれません。



  • 以下妄想

 本作のシナリオライタはちょっと変な傾向があるかもしれないなと妄想しました。所々キャラが『設定』とかメタなネタを口走ります。これはエロゲ・ラノベでよくあるようなお約束の笑いなのですが、このメタネタのためにどういうことだか本作内の魅力的に描かれたキャラが動いて会話する"作為性の自然さ"の強度が増しているように思えました。エロゲキャラクタとして自覚させて動かしたからこそ、エロゲとして自然だったみたいな? そう、変な褒め方ですが、『小芝居上手』が一番近いですかね。ちょっと他の作品も当たってみたいと感じさせる、個人的に感じてしまった魅力でした。考えすぎて、気のせいかもしれませんが。

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