傀儡の教室 感想

  • 前置き

 読み方は「あやつりのきょうしつ」。
 本作は元々2000年11月10日に発売されたもので、2003年4月25日発売の『生贄の教室』に教室シリーズとして『贖罪の教室』『贖罪の教室 BADEND』『傀儡の教室HAPPYEND』とまとめられてディレクターズカット版で収録されました。
 今回の感想は『生贄の教室』に収録されたバージョンによります。

  • 全体像

 最初の場面は2001年8月8日から始まります。アーチェリー部の次期女性キャプテン候補の日向睦月はズルしたとして部員に脅されて反省させるためと称してヤラれてしまい、これからも反省させるために性奴隷にすると言われ最初は拒否するも輪姦されながら快楽を求めて承認してしまいます。
 そして場面は2004年7月24日に飛び、大学生になった睦月が校舎取り壊しを期とした同窓会開催を知らせるハガキを受け取るシーンとなります。彼女の様子は性奴隷になった影響が微塵もなく、むしろ学園生活を懐かしんでいます。彼女の態度の違和感が何処から来るのか解らないまま、復讐者や傀儡者など不穏な視点が挟まれ、連絡通知の日付が1日違っていたまでテンポよく進んでいきます。
 でも睦月は空いた一日を活用しようと取り壊しになる母校を一目見るために学園に向かいます。そして、そこには間違った通知を契機に一日早く集った面々がいて――なんと全員アーチェリー部員で偶然に驚き喜びます。それで思い出にと校舎を回ることとなり、何故か校舎から出られなくなる――という所までが冒頭です。
 

 ここまでに謎が幾つも出てきます。

 ・学園時代の凌辱の描写は現実なのか。
 ・現実ならば何故睦月は憶えていないのか。
 ・睦月だけが語る暁先輩とは誰なのか。
 ・何故アーチェリー部員だけ集まったのか。
 ・何故校舎から出られなくなったのか。
 ・そして復讐者と傀儡者は誰で目的は何なのか。

 登場人物たちも校舎から出られないことだけ疑問に思うのですが、割合早々にざっくりとネタが割られます。
 ネタ自体はそこまで重要ではないので明かしてしまうと、“催眠術”が原因とされます。
 催眠術によって無意識に行動を制限され操られているのだろうと。で、“催眠術”というガジェットを前提として、より重要な問題としてクローズアップされるのは誰が、何時、何のためにかけたのか、です。そこに記憶喪失などが関わって謎がより混迷化します。
 以降は、まず複数いる登場人物たちのそれぞれの視点から校舎を出るためにさ迷う様子を描き、主要な面々が揃ってからはそれらの謎によってストーリーが牽引されていきます。


 ここで一足先にシステムに付いて言及します。本作は複数視点の語りによって一場面での情報を制限していると同時に、過去と現在とを交互に描いていて、状況が複雑になっています。その複雑な視点と時系列とをあえて時刻表的に整理することによって可視的にしているのが優れた点でした。無駄な所で錯綜させるよりも重要な謎が解りやすいためにすっきりとしています。具体的には下のスクショとなります。
 
 選択していくことで見える視点と時点が増えていきます。このザッピングシステムはストーリーと実に合っていました。

 
 それで、シーンを見て行くにつれて真相に迫るのですが、その真相はぶっちゃけると、うーんという感じでした。激しく微妙。
 催眠術の効果、睦月のズルの内容、暁先輩の正体etc徐々に明かされる因子によって真相を狭めて行き、過去と現在をつなげる一つのイベントに収集させる経緯を、性別誤認・人物誤認の叙述トリックetcの騙しの技術によって見事に修飾しているのが勿体無いぐらいに残念でした。
 あまりにも、チープにしておぞましい真相でした。
 暁先輩の人間離れした在り方と、登場人物たちの人生に幸あれという趣旨は判りますが、評価出来かねます。そもそもに魅力がないのは兎も角として、ちょっとどうかと。
 や、まあ、人によるかもしれません。感動するのが普通なのかも知れません。
 取り敢えず、私はドン引きだったということで。一つの事件を中心とした全体構造と解明の物語をと作ろうと言う意志と、それを達成する手腕が兼ね備えられていたのは嬉しいことですが、決定的に趣味が合いませんでした。
 つーか殴って記憶喪失が許されるのは1990年代までかと。

 

  • エロ

 和姦が3割ぐらい。後は凌辱で輪姦ばかりです。催眠術の影響もありますが口では嫌と言ってもヤラれて激しく感じてしまうヒロインばかりで、快楽落ち一辺倒です。陵辱する側はそんなヒロインを詰って、その詰りによって余計に感じてしまうという精神を攻める描写はエロかったです。冷静なヒロインがかけられて感じてしまい、それを察せられて余計に快感を覚えるとか最高でした。
 それに部の合宿の場面で台所や風呂や自室といった日常的な場所で無理に快楽に燃えさせられて辱められることによる屈折した屈辱もよく書けていました。
 制服、部のコスチューム、水着、エプロン、チェア服というヒロインたちにとって性的な行動をとる服装ではない格好で陵辱される場面で精神的に複雑な快楽を得るあたりも良かったですね。
 あと精神を退行させて性的なことを何も判らない子供にしたり、経験豊富な女性を処女に戻してぎこちなさを引き出したりという催眠術を使ったシチュエーションの基本は押さえられていました。


 こういった精神的なエロ描写の良さとは反対に肉体描写はいまいちだったかもしれません。絵もクオリティは高いものの差分がおとなしめで、複数にされている臨場感がなく、残念でした。


 ただシーンは充分数ありますし、精神的な快楽に堕ちて行くエロが好きなら気に入ると思います。催眠術を使ったいわゆるMC的なエロとはまた違うかも知れませんので注意が必要です。

  • まとめ

 以上。心意気が空回りした怪作という印象です。

  • Link

 ruf-オフィシャルホームページ


 

生贄の教室
生贄の教室
posted with amazlet at 10.05.07
ru'f (2003-04-25)