2.5次元の誘惑 1-8 雑感

 漫画研究部の部室で1人アニメに興じてた少年をコスプレイヤー志望の少女が訪れる。エロいコスプレのROMを作りたい、ついては写真を撮って欲しい、と。そして好きな物を好きだと主張するオタクの生き方を始めていく――

 評判は良かったもののジャンプのエロラブコメねーというあまり期待していないで手に取ったのですが、ところがどっこい。どこを切っても熱い血潮が流れている熱血の物語でした。
 シリーズとしては3巻までが助走でしょうか。それまでも面白いのですが、今一つ突き抜けられないもどかしさがありました。
 4巻から俄然熱さが増しに増して、没入度が高まっていきました。
 ライバルの発言によって自分のコスプレへの愛を疑うようになってしまったヒロインへ主人公が声をかけて曰く、

 「キミはリリエルじゃない」
 「リリエルだからじゃない」
 「キミは――」
   (4巻、No.62)

 というこれまでの少女の行為を言い表して肯定した一連の台詞は本当に素晴らしく、ヒロインの心に火が灯るのもむべなるかなと。
 以降、誰もかれもが好きな物への愛を燃え上がらせ、好きな自分を認めていきます。最初はどこか自信を持ちきれずおっかなびっくりで、確信を持っていたこともたまには揺らぐけど、出会って話して共にコスプレしたことで変わっていくのが読んでいて実に心躍るものでした。
 始まりはコスプレイヤーの活動をやりたいという熱意を持った少女が押しかけてきてからで、一人で燻っていたオタクがそのオタクライフに張り合いを持ち、一度はコスプレを捨てた先生がコスプレを取り戻し、様々な屈託を持つコスプレイヤーたちが望んだ以上の輝きを得ていきます。冷たい現実は確かにあるけれど、同じものを好きなひとたちと共に高めあえることのなんと幸せそうで滾ることか。好きな物を好きだと思えて言えるようになることが、折々で好きだ!と叫ぶことの、なんて楽しくて心が震えることか。
 理想過ぎはするのですが、優しい世界の描き方のバランスが巧みで甘さの節度があるため、こうあって欲しいと――確かに願いたくなるような美しい夢でした。そりゃあもう、ぞっこん嵌るしかありません。
 またコスプレへの愛を十二分に描いた上で、愛情という数値に出来ず比べて優劣をつけにくい部分を、新たな四天王とかネット記事のニューカマーのコスプレイヤーの順位をつけるとか、「友情、努力、処理」というジャンプ的な文法で判りやすくしていた工夫も嫌いではありませんでした。
 熱意の上昇はまだまだとどまるところを見せないので、今後の展開に大いに期待しています。


 ところで最後に妄言を。
 人気投票をするなら投票先は生徒会長、一択。
 ほら、真面目だけど、洒落もちゃんと判って、清楚な美女――惚れない筈がなく。もっともっと番外編での活躍を期待しています。


 以上。好きなシリーズになりました。お薦め。

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 HP-『2.5次元の誘惑』原作公式サイト