シドニアの騎士 2 感想

 前作の感想はこちら→シドニアの騎士 1 感想 - ここにいないのは


 初っ端から奇居子との戦闘シーンが描かれています。エースであった討伐部隊が絶望とともに簡単に全滅し、谷風・星白・岐神・仄の4名に奇居子に唯一対抗出来る武器・カビザシの回収が命令される、という流れ。つまりは、ヒーローが登場するお膳立てが整ったということ。
 状況に導かれるまま、谷風はシミュレーションで高得点を叩きだしたように、奇居子を撃破します。
 爆破して核が露出した奇居子が慣性のままに向かってきた所を刺す――その流れ、その絵は宇宙での戦闘として魅せられました。巨大な宇宙船の急速な斜めへの動きによって内部で人が飛び、壁や地面に叩きつけられ肉塊と化すのを容赦なく描写するのも良かったです。恐らく何処かで嘘が混じっているのでしょうが、私は気になりませんでした。
 また、その後の救出劇もまた最高でした。衛人二百五十六騎による巨大な輪。黒と白の塗りがはっきりしている絵だからこそ、美しいコントラストが生じていました。SFは絵だなあ、と言いたくなるのも判ります。

 
 中盤ではラブコメします。かなり真っ当なラブコメで、四角関係やら、メイドさんやら、宇宙船内の海でのデート(これまた良い絵です)やら、もにょもにょします。
 しかし周囲は宇宙で、彼らが生きているのは宇宙船の中で、奇居子が襲いかかる環境であり、和やかな毎日が続きません。あっさりと壊れます。一躍英雄となった谷風への嫉妬もあり、戻らない関係性の崩壊を招きます。
 ここでは明と暗のメリハリがはっきりして退屈させませんし、宇宙船内の停滞したどろどろした感情がそこかしこで噴出するのは船内がどうなっているのか示唆していて、世界観への納得が深まりました。


 最後の衝撃的な引きや中途の歴史回想など、全体的に奇居子の謎が1巻より更に取り上げられていました。何故最初に地球に投下された奇居子は人型をしていたのか、何故奇居子は人を襲うのか、最後に見えた映像は何を意味するのかetc、気になる謎ばかりです。
 また主人公・谷風長道自身の謎も深まります。何故傷の治りが早いのか、何故光合成が出来ないのかetc、出生の謎に収束する謎であり、本人も不思議に思うようになってきています。
 どちらも今後更に情報が増えて行き、錯綜することでしょう、実に楽しみです。


 凄いと感じたのは谷風の性格付けです。失って、傷ついて、落ち込みながら、悔いながら――帰着したのは最後の思い。今まで散々空気読まない性格を強調されているからこそ、原初にあるものがどうなっているのか、と怖い想像を回してしまいました。


 フェチに付いて。急激にGがかかった時に黒ストとパンツが見えたり、光合成のために目の前で美少女が裸になっていたり(直後の美少女の半着の宇宙服がこれまた素晴らしい)、おしっこを濾過して飲ませたり、おしっこを濾過して飲ませたり(大事なことなので2回言いました)、奇居子によって美少女の片目と右腕が無くなった図を描いたり、と随所で強烈に発揮されていました。
 満足しました。


 以上。癖がありますが、面白かったです。続編が待ち望まれます。

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