恋は光 6 雑感

 恋をしている人が光って見える偏屈な男子大学生・西条を主人公にし、登場人物皆が恋とは何かを巡り思弁をこらし、お試しで付き合ったり交換日記から始めてみたり段階的な実践を踏む、静的に進む恋愛漫画の第6巻。
 
 
 個人的にフィクション作品に触れるにあたって、陽性にせよ、陰性にせよ、感情が爆発する場面に最もわくわくします。
 周到に準備をされ、巻やページを積み重ね、長いことキャラクタに付き合った上で、満を持して披露されるのは絶頂物。
 逆に今までの流れと反して、奥底に隠し持っていたものがふとこぼれ落ちるように、或いは溜まりに溜まったもの臨界点を超えて外に一気に流れ出すのもまた良し。


 本作においては『北代が好意を西条へ伝える』かどうかが個人的な主眼でした。これまでの巻で提出されていた条件は以下。


 1.女子大生・北代は西条が好き。
 2.西条には北代が光って見えない。だから恋をしていないと判断していた。
 3.北代は西条が北代を光って見えないから恋をしていないと判断されていると知っている。
 4.西条と北代は小学校からの友好関係で、驚くほど居心地が良く、壊れるのはお互い望まない。


 だから北代は西条の良い相談役である親友で、彼が誰かとお試しに付き合ったり、恋をしてほしいと望むように動いていくのを、一番近い距離で笑って傷ついていくことになります。
 もう一読者としてメッチャもやもやもやもやしていたものです。
 いみじくもお試し相手であった女性キャラは彼らの関係をこう評しています。

 北代が西条さんを好きだってバレることの方がヤバイし…!!
 私が西条さんだったら絶対北代と付き合うもん!!
          (恋は光 第6巻 P127)

 全くです。


 しかしまあ、彼ら彼女らにとって「恋とは何か」を追い求めてきた本作において、そんなある意味甘美なあいまいな関係が許される筈がなく。
 とうとう、読んできた誰もかもが叫びたくなる瞬間が訪れるのです。


 西条と同じ様に恋をしている人間が光って見える女子高生と出会うことになり、その女子高生は西条と北代を見て、こう告げます。

 今まで見た
 誰よりも
 北代さんが
 一番光ってて
         (恋は光 第6巻 P106)


 うおおおお!!!
 うおおおおお!!
 言いよった、こやつは!!!
 蓋をされていた感情の坩堝を何気なく開けやがった!!!
 これぞ、これぞいわゆる感情大爆発というやつですよ!!!


 ――意味することはただ一つ。
 同類の言葉だからこそ西条は隣に立つ北代が何を考えているのか、思弁だけではなく、光っているという事実によって理解へと至ります。
 ばれたと知った北代がどうするかって? 
 もう読めとしか。赤面させれば第一人者の破壊力は流石というか、ここに極まれりというか。
 

 あとそうそう。
 語りたいのは北代の想いが露わになった興奮だけではありません。
 そこからの西条の回想の尊さに胸が撃ち抜かれました。


   (恋は光 第6巻 P150)

 小学生から一緒にいた何気ない思い出。隣にいてくれた幼馴染の重要さの再認識。そして己の彼女への認識の再評価。
 ああ、なんて、美しい。幼馴染物の恋愛物の覇道たるや。


 次で締めということですが、ここまでくると西条が誰を選ぶか、西条が光っていると認識する人は何なのかはあまり興味がありません。北代への感情をどう言葉にするか――を知ればただただ満足です。


 以上。本当にあの一ページは叫びたくなる瞬間でした。現時点でこの作品大好きです。願わくばきちんと完結して欲しいです。

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