星織ユメミライ 雑感

 本作の構成の特徴はどのヒロインにおいてもSchool<学園編>とAfter<職業編>の二部に分かれていることにあるでしょう。Schoolで培った基盤を元にAfterで豊かになっていくという具合に、エロを増やすためではなく、コンセプトレベルで意味がある構成になっていました。
 そこで描かれるのは、同時代の仲間と仲良くなり、恋人同士になり、楽しい学園生活を送り、延いては仕事に就いて結婚し、一生のパートナーを得ていく過程。ひっくるめれば人生であり、本作は主人公やヒロインらが一生をこれから興していこうとする熱い時間を見事に切り取っていました。
 熱い時間――なにせ送るメインの時期は学園生。いくらでも未来を見据えていられる立場であり、また驚異的に成長出来るポテンシャルに満ちています。まず主人公からして建築家を目指し、勉強し、スケッチを努力し、憧れる建築家の事務所に赴くという、将来を見据えたバイタリティを持っています。他の多数のヒロインもそうで、ピアノとか、写真とか、星とか、自覚的にしろ無自覚にしろ将来一生を費やす階を登ろうとしています。それでいて一番愉快な時期でもあり、硬直して将来の仕事を見据えて延々努力するだけではつまらないとばかりに、広がっていく関係を深めながら、今を楽しむのを忘れません。おおいに遊ぶのも、人生を豊かにする在り方で。
 豊に情緒が成長した先で、社会への奉仕あるいは自己実現としての職業編。Afterで仕事をするようになるのですが、仕事で自分のやりたいことを成していくために、パートナーと余暇を楽しむなど生活で折り合いをつけて潰れないようにする上で、しかし一身を懸けて勤めるのは、これまた新進気鋭のライフスタイルとして極めて優良ではないでしょうか。
 そして当然、恋と愛もまた。互いに好き合うという成就―そして恋する者同士が互いを支え合いながら自身の人生を彩っていく。
 身体を重ねる――性行動もまた彼らにとっての成し遂げるべき一つの証となっています。これ以上は曝け出せないという身体と身体、そして性行為が気持ち良いという快楽の圧倒的な正義。それでいて没頭はするが、耽り過ぎることもない慎み深さも発揮されるのは微笑ましいったらありゃしません。 
 周りにいる年長者らは先達として未熟な彼らを日向に影にサポートし、育っていく一助の労を惜しみません。
 ひっくるめて、本作のありとあらゆる所に、きわめて真っ当なもので満ちています。暗いものはなく、疲れもなく、劣化もなく、いずれくる終わりなんてものはない。
 ――なんて、眩い、理想郷。
 恋人と出会い、性行為を含めて成長していくエロゲとして間違いなく満点の出来。同時代的な学園物エロゲの代名詞として挙げられる、傑作でしょう。


 あとは落穂広い。といってもほぼ文句なしでまとめられるのですが。
 ヒロイン。誰もかもが魅力的なのがびっくりです。非常に美麗な絵が魅力をブーストしている感はありますが、それでもなお一人の人格を持つ人間として魅力を持たせる形にしていたと思います。捨てキャラがおらず、誰にもこいつとは付き合いたくないと思わせないとしたのは高く評価したいところ。個人的に一番好みだったのは律佳です。クールビューティの中に極上の甘さを有していました。


 シナリオ。上の口上で軽く触れたようにコンセプトが遵守されており、ディレクションの手腕は間違いなく褒めるべきでしょう。個々の質を深く突っ込むと首をひねるところも少々ありますが、おおよそ無難以上だったと思いますし、展開を無理に繋げようと不自然に知的レベルを下げなかったのは特筆すべき。
 個別シナリオで言っても特に優劣はつかないと思います。ただ恋人イベントは剛速球のストレートがあると思えば、捻りに捻ったロマンチックもあったりとお見事の一言。例えば学園の屋上で星の逸話を語るという剛速球、あるいは風呂で壁に備え付けてある画面にスマフォで海の映像流して海にいる気分を出すという捻り具合。このロマンチックのセンス大好きです。
 あと個人的にはそらルートを最終に持ってくるのがお薦め。あのAfterは作品の集大成めいていて、かつて出会った青春時代の仲間と成長した上で再開し仕事を共にするというschoolとafterに架け橋がかかっていくのには素直に感動しました。


 エロ。これまたどのシナリオでも傾向が似ていてほんとクオリティコントロールが凄い。まず一目散に結合へと突っ走りません。告白したらキスまで。次の機会で二人きっりになり、愛おしさが募り、キスして、盛り上がって胸とか秘部とか触ってみるテストすると、ヒロインが怖がり、それに避妊具の準備がなかったり今日はここまで。或はお試しでベッティングしたり、胸をひたすら何度ももんだり、口淫だけで射精させたり、と恋人ならではの結合する前で足踏みしながらの性行為を楽しみます。そしてとうとう覚悟は決め、お互い今日はセックスする日だと理解したうえで、順序だってコンドームをつけて事に至ります。恋人同士の機微ですか、そうですか、うわーいと叫びたくなったり、壁を殴りたくなったりしますがおいておきましょう。事をなしたら、あとはもう気持ちの良いセックスが繰り返されます。外ではきびきびして働いている後でヒロインが自宅で軽めのコスプレしてイタすとか、うわあ見ちゃったよという罪悪感さえ生まれますが、それはそれ趣十分、興奮しました。結論としては質量十分かと。


 最後にゲームシステム面。ヒロインと連絡を取るときにLINEもどきをするのですが、これがまた良く出来ていました。例えばこんな感じ。
  
  
 メッセージとスタンプの組み合わせ方は不自然ではなく、ヒロインたちとLINEを交わしている気分になれました。良かった、美少女とLINEをする理想はいまここに叶えられたのだーー!!


 以上。重ねて言いますが傑作。学園物エロゲが好きならお薦め。

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星織ユメミライ 通常版
tonework's (2014-08-29)