茜街奇譚 ver 1.03 感想

  • 感想

 人と鬼とが棲む「茜街」を舞台にし、30半ばの中年男性の「相談屋」望月公信と、20代前半の破魔の才能を持った美女・藤原姫乃とが鬼に絡んだ事件に関わっていく、というのがこの作品の基本骨格。所有されているのはメインストーリー1本と、エンド別に増えていく短編3本です。
 絵はなく、背景CGの変化でメリハリをつけています。


 基本的には伝奇ホラーであり、妖怪を使ったよくあるような設定なのですが、設定付けとストーリーの展開が巧みなので古さは感じませんでした。神経質で人と関わるのが苦手な普通の女性とその“妹”との切ない絆と両者の己の性質にあった在り方は感動的であり、抑えた筆致も非常に読まされました。短編のそれぞれの行く先も勇気・未来を感じさせて後味が良く、上手いの一言。
 
 
 ただ何よりも、最後の最後にあった暗い煌きに魅了されたのかもしれません。物語のルールがボーダーラインから鬼に転じ、征する人の視点から描かれるようになった時、

この川辺は、もはや人間の住む世界ではなかった。


 滲み出る世界に孤立したおぞましさに震えました。魅せるべき所で震わされてしまってはファンになるのに躊躇しませんでした。
 短編による余韻も十分であり、その響きは続きを読みたいと強く思わせる質でしたし、出来れば作者の方に完成していただけると嬉しいと思っています。
 

 以上。軽めの伝奇物が好きならお勧めです。

 

  • Link

 NO−HOPE