霧谷伯爵家の六姉妹 感想

  • シナリオ

 主人公・時津大輔はゴシップ誌のライターだったが、廃刊に伴って失業することになった。困り果てている時に霧谷家から書生として住まないかという手紙が届いた。宛名が死者からであること、何故自分が呼ばれたのか理由がわからないこと、また新華族である霧谷家の怪しげな噂が多いことに興味を抱き、大輔は人里はなれた場所にある屋敷に赴くことにした。そこで彼は霧谷家を取り仕切っている澄美に彼女の娘たち、4姉妹を孕ませる為に抱くように依頼されることになる――


 という感じの冒頭。戸惑う大輔は1週間お試しで抱いてから選べばいいという妥協案に乗るのですが、澄美の様子からして逃がす気はないと気取ります。しかし臆せずに、取り敢えずは意図に沿うように行動しつつ、真相を探ろうと鷹揚に構えます。そうした陽性に前向きな主人公として設定されています。
 同時に過去に一時的に霧谷家に住んでいたことがあり、死んでしまった姉妹の一人と懇意にしていたという彼でなくてはならない理由も付与されています。時折浮かび上がる過去の記憶に苛まれ、死んでしまった少女を懐かしく思うことが追々利いてくのですが、それは後述することにします。


 それで大輔は屋敷で1週間過ごすうちに、姉妹たちと仲良くなり、屋敷に住む人間関係も把握します。獰猛な番犬だったり、粗野凶暴で薄気味悪い使用人だったり、愛想の悪い軍人だったり、いかにもな悪人の書生だったり、謎の外人の美女だったり、虐げられるうら若き女中だったりと暗い人間関係は館っぽさを盛り立てます。加えて入り婿で入った自分と同じ立場の頭首が仮面を被り車椅子に乗ったほぼ廃人として登場します。繰り返しますが仮面を被った当主です。今時、もとい古き良きお約束的な外見で嬉しくなりますね。


 館の構造もオーソドックスの極みを行き、教会あり、墓地あり、謎の蔵あり、地下には牢屋ありありです。しかも更に地下には謎の軍備施設さえあります。なおかつ部屋の前を犬の死体がぶちまけられ、文字を書かれて雰囲気を盛り上げます。
 ここで期待せざるをえないのは炎上なのですが、どのルートかは秘密にしますが炎上します。見事な館っぷりでした


 肝心の霧谷家の謎なのですが、これまたよくある話です。いわゆる一つの吸血鬼の一族。異端の血のための呪いがあり、呪いが結ばれる障害となるというのが基本的な流れです。乗り越えるために家の歴史・血に付いて調べていき、真相に迫っていくのですが、物凄い衝撃があるどんでん返しや仕掛けは施されていません。しかし伝奇的な設定が一つ一つ丁寧にヒロインに配置されていて、それぞれの人間関係とも合致しており、判りやすく、なおかつ超自然の設定に対して引かずにむしろ興味を惹かれることになります。


 詰まる所。
 薄暗い人間関係、奇妙な館、異端の血――これぞエロ伝奇の3種の神器。
 そのエロ伝奇っぽさを最後まで押し通した完成度の高いシナリオでした。

 
 ヒロインたちも皆魅力的です。特にメインである6姉妹たちは殊更に魅力がありました。
 夜伽の際に選ぶ姉妹――穏やかで母乳が出る体質の長女・撫子、暗くて人を避ける三女・藍、最初からフレンドリーに接してくる五女・紅、懐っこい妹気質の六女・菫――と1週間一緒に生活し、性行為を重ねていくうちに互いを理解していくシナリオを通して、彼女たちの性質・魅力をプレイヤも判ってきます。そこまで深い描写はないのですが、閉鎖空間であり限られた場所で限られた行動を取るからこそ、判りやすかったのかもしれません。
 だからこそバッドエンドも活きるというもので、それぞれ固有のバッドエンドに至ります。
 凌辱されて快楽に流されるNTR/凌辱バッドエンドは、結ばれた後でありながら血が快楽を求めるどうしようもなさと、悔しがらせた後はさっくりと主人公が殺されるあっけなさが爽快でした。
 また蟲になるエンドや、上記で述べた炎上エンドもエロ伝奇らしく良かったです。そして紅だけ特別に3つのエンドが用意されているのですが、そのうち一つが如何にもで歓喜しました。

 紅は腕組みをしながら、姉の宣戦布告を受け入れた。

 そうなった流れとその後の退廃の格好良さと言ったら、もう。何とも正しい――吸血鬼エンドでした。


 また途中に乱入する自由奔放に生きている次女・牡丹の奔放さも良かったのですが、それよりも最後に攻略できるハーレムルートを含めた四女・藤乃が彼女自体の描写はぱっと出でありながら実に鮮やかで、見事な造型をしていました。それまでのシナリオとエロ全てが溜めとして働いていることもあるかもしれません。
 散々に血に翻弄され、性行動をした挙句にたどり着く、忘却した藤乃との過去。垣間見た記憶からは過去はお姉さんとの束の間の幸せな生活に見え、再会はうち捨てられた蔵での幽玄な美しいものでした。

【藤乃】「――変わらないわ、大輔くん。本当に」
【大輔】「そういう貴女は、いっそう美しくなった」
【藤乃】「あらあら・・・・・・」
【藤乃】「泣き虫で可愛かった大輔くんはもういないのね。お姉ちゃん、残念だわ」
【大輔】「もう泣きはしませんが、ひざ枕なら今でもして欲しいですね――」
【大輔】「――藤乃お嬢様」

 しかし。そう、しかしハーレムルートを含むと述べたように、待望した再会は決して安易な救いではありませんでした。異形の果てに現れたのは矢張り異形。万を辞して告げられた彼女の望みの成就によって作品はそれまでを否定して完結します。

【藤乃】「ふふっ、もっと聡明な子を期待していましたか? 芸術家肌で、哲学者のような私を」

 この締め方は本当に素晴らしかった。
 作品の前提であった孕ませるという行為の否定であり――今まで語られたことの全ての否定。にも関わらずそれまでを継いで作品として綺麗に閉じて完成しています。
 このハーレムへの持って行き方をもって傑作と称しても言いぐらいです。

  • エロ

 かなりどうでもいい話から始めますが、本作のエロCGを見ていくらエロゲといえども物理法則或いは生理的な機序なから完全には逃れえないんだなあという感慨を抱きました。
 何のことかと言うと、CGにおいて海綿体が充血しないと屹立しない、そして長いと充血していない時はかなり曲がりやすい、それに長いと充血して屹立しても曲がる、そんな当たり前がなされていました。


 要は、アレがデカイ。
 リアルにデカイ。


 それを力いっぱい、こねくり回したり、咥えたり、挟んだり、入れたりします。エロい行為でした。しかも長いことが判る絵図のために、行為のエロさが何故か倍増して伝わってきました。これが所謂、てこの原理なんでしょうかね?
 閑話休題
 M&Mの絵の肉体的なエロさを縦横無尽に使われた実にエロエロしい性行為ばかりでした。量も揃っています。凌辱は数少ないながら、嫌々感じちゃうタイプで最高です。
 そんな感じにエロに関しては文句なしと言いたい所ですが、ただ一点文句があります。アイテム集めをさせる意義が判りませんでした。どのヒロインでも全アイテム使えるならまでしもそうじゃないですし。
 つーか、何故紅にメイド服を着させられないのか小一時間問い詰めたい。マジで。


 あと個人的に良かったのは全ヒロインと性行為なしに浴場に入ること。真っ裸なヒロインと湯船につかってのんびりと話したり、純粋に背中を流してもらえます。何の衒いもない裸の付き合いの清清しさを感じて、エロゲって良いなあと思う瞬間でした。

  • まとめ

 以上。アトリエかぐやにまた一つ傑作が生まれました。お薦めです。

  • Link

 OHP-アトリエかぐや 入り口