Sugar,sugar,sugarcoat 雑感

 ヘレナはマリーに恋をした。マリーは自らが悪魔だと告げ、ヘレナが他の少女たちから愛されるように振る舞い、その愛を捧げるように命令する。マリーへの愛を示すために――

 という百合短編ADV。
 3人の少女とそれぞれ3通りの結末を迎え、悪魔のマリーへどのような愛を捧げるかで結末が変わっていきます。

 個人的に非常に好みな作品でした。
 ゲームのシチュエーションが本当に妙。
 女学院を舞台とし4人の仲良しグループに1人の転校生が加わり、ヘレナがその転校生に愛したことによって、その彼女からの命令で友達を落としていくことになる――とかもうね最高。

 

 距離の保たれた仲の良い友達から一歩踏み出し、それぞれの秘めていた想いを明らかにして少女たちに寄り添っていき、彼女たちはヘレナを愛するようになっていくのですが、それは悪魔/愛する人からの命令で、しかも悪魔がその仲を取り持って攻略を助けてくれるときます。

 

 攻略対象はいじらしく、適切に選択肢を選んで、適当な振る舞いをしていけば、幸せなHappy endを迎えることが出来ます。
 ただ、どこまでがヘレナの意思で、どこからがヘレナの意思でないのか。動いているヘレナにさえ分かりかねる在り方で。
 仲良くなって愛を成就させる――これは本当に幸せなのか、正しいのか。
 各シナリオそのものが短いながら上手い上に、プレイしていくことそのものの屈託と罪悪感がのせられてかなり心動かされる内容になっていました。

 そうしてそれぞれの愛を集める=恋愛ADVのシナリオを繰り返しているという構造を自覚させた上で、上位にあるマリーへ愛を示すとはどういうことかとメタ構造へと踏み込んで本作はフィナーレを迎えます。
 プレイの時間と操作がひっくるめて愛の観察で、愛の告白である――愛にまつわる一つのゲーム体験として素晴らしい内容ではないでしょうか。
 
 絵は可愛らしくて良いですし、画面のちょっとしたエフェクトも嵌っていて、全体的にセンス良し。

 

 とりわけ最序盤のここの魅せ方は鮮烈で大好きでした。


 なお攻略で詰まったら作者の攻略を参照するのが良いかと。


 以上。大好きな百合作品。ちょうお薦め。
 

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