あかねさす柘榴の都 1,2 雑感

 少年・夏樹は14歳にして母親を亡くし、スペインはグラナダに住む叔母に引き取られた。夏樹は母の故郷でもあるグラナダでの生活にゆっくりと慣れていく――

 本作は母を亡くした少年のグラナダでの生活を描いています。
 最初は慣れた日本から異国で迷い込んだようで、どう生きていけばいいのかに悩むことになります。

 (1巻、kindle no.25)

 両親がいなくて心から頼れるひとがいない中で一から生活環境を作り上げないといけないというのは14歳の少年にとってはけっこう大変な出来事です。でも新しい生き方をするのに日本を離れるのは良い機会であったし、グラナダという場所は少年が母を亡くした傷心から立ち直っていくのにうってつけでありました。
 だんだんと夏樹がグラナダに親しみ、グラナダに住む人々と知り合い、

 (2巻、kindle no.15)

 今を/そしてこれからどう生きていくのか折り合いをつけようとしていきます。
 起きていることを形容するなら、魂の癒しとなるでしょうか。救済ほど重いものではないですし、そこまで劇的なものは日常に必要としていません。
 ひとがどうしようもないことに傷ついて、生きていくために再生していく――そのありきたりでなにげない尊い姿を観るのはほんとうに好きですし、それを上手く描いてくれると感謝の念しかありません。
 似たような触感の作品として『違国日記』がありますが、あちらより繊細さを欠いてちょっと能天気なところが自分にはマッチしました。

 以上。これからの夏樹の日常をおっていくのが実に楽しみで、続きに期待しています。

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