ハコヅメ 17&別章 アンボックス 雑感

 今回17巻とアンボックスは同時に出版されました。時系列的には17巻→アンボックスとなり、自分はそう読みました。そして読み終えてから堪らず、癒しと笑いを求めて即座に17巻を読み返した次第。

 いや、ほんとアンボックスが嫌になるくらい良く出来ているんですよ。
 別章とあるように、生活安全課に属するカナをメインとし、とある男女のいざこざから起きた事件の顛末を1巻完結で書いています。
 事件そのものは"関係がないもの"からすれば、ありきたりです。付き合っていた男女が男のDVから別れることになったが、女は大量出血で行方不明となり、男は失踪した――ほら誰がどうなったかは一番つまらない予測が答えです。
 しかしそこでは警察が当然きっちりと捜査を行っており、その過程で傷つく被害者の家族がいるし、とやかく口だけ出すどうしようもない第3者がいるし、そして傷つく捜査官がいるということを丁寧に描き出します。
 生活安全課として関わったのに女性を助けられなかった――と苛まれるカナの魂の遍歴は身につまされるぐらい迫真でした。
 それまで丁寧で迫真だからこそ、訪れる最終話が、あまりにもつらくて、心底ありがたくて、本当にぼろぼろと泣きました。
 数々の悲しい現実は心を折るのに十分で、でも利害関係なく共に笑い泣いた同期がいて――山田のバカのなんてありがたいことか――、担当した時期以降卒業した後でも気にかけてくれる先生――今回仰げば尊しわが師の恩という表現以外に評する言葉を持ちませんでした――がいる。
 カナの意に反して警官であることを勧めても、すすめなくても、カナを思いやっているのには間違いなく、そのどれもが彼女がこれから生きていく力になっていく。
 重ね重ね辛さとありがたさとに心は千々に乱れまくりで、いやあやってくれますわと脱帽するしかありません。

 対して17巻はいつものをいつものように高クオリティで魅せてくれました。
 特に「笑ってはいけない○○」的な笑いが相変わらず抜群に上手く、その143での本部長賞授与は爆笑しっぱなしでした。
 まあ大いに笑って、アンボックスに行ったので、その感情の高低差にちょっと眩暈がしたりしなかったりしたんですがね。


 以上。川合の驚くべき未来が明示されましたし、ここから更に何を持ってくるのか本当に楽しみです。

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